個人間の不動産売買での注意点まとめ|仲介業者の役割と個人売買のリスク・デメリット

不動産売却の基礎知識
執筆者
西原 太

宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP) 
プリズム・エージェンシー株式会社 代表
不動産の売買・賃貸仲介の経験から、不動産仲介をコンサルティングサービスととらえ、お客様に寄り添いながらより満足のいく仲介・正しい情報提供を目標に日々営業中。東京都葛飾区出身
得意分野:不動産売却、資産活用、法人、医療分野

不動産取引の際に発生する仲介手数料は決して安いものではないので 、直接売主や買主を探せないかと考える人は少なくないと思います。しかしながら、個人間売買は多くないのが実情です。不動産取引は、その人の一生の間に数えるほどしかない大きな売買です。個人間売買にはどんなリスクやデメリットがあるのでしょうか。

仲介手数料はどれぐらい発生する?

不動産業者の仲介手数料は売主・買主それぞれから3%+6万円+消費税(価格が400万円超の場合)という大きな費用が発生しますが、これは売主・買主それぞれにかかる費用です。例えば3,000万円の物件の取引であれば最大で96万円+消費税を売主・買主双方が仲介業者に支払わなくてはいけません。

不動産の仲介手数料は決して安い金額ではないので、この費用が掛からないのは大きなメリットです。仲介手数料には営業活動の費用という側面もありますが、宅地建物取引業者は許認可制度で責任も負っているため、安全な取引をするうえでの対価にもなっています。

仲介業者の役割

個人売買を行う場合は、仲介業者が行う仕事を自分でやらなくてはいけません。

仲介業者の仕事は以下の流れになっています。

  1. 査定…取引事例や近隣事例、路線価・公示価格をもとに売却価格を決定します。宅建業法上、価格を述べるときは根拠を伝えなくてなりません。
  2. 媒介契約…希望売却価格が決まったら、販売活動を行う契約体系の取り決めを行います。専属専任媒介、専任媒介、一般媒介の三種類に分かれます。
  3. 広告宣伝…購入希望者を募る広告活動を行います。レインズへの登録なども行います。物件案内(内覧)…現地の物件案内を行い、購入希望者に説明します。
  4. 申込・契約条件の決定…売却希望者と購入希望者の条件をすり合わせます。引き渡し時期や住宅ローン特約、瑕疵担保責任の有無などを取り決めます。
  5. 重要事項説明・契約…物件の調査を行い条件や物件調査の内容、引き渡しの方法を決定、重要事項説明を実施し契約書を取り交わします。
  6. 物件の引き渡し…売買代金を支払い、物件の引き渡しをします。

個人間売買を希望されている方は、仲介業者の仕事のうち①「査定」から④「物件案内」は不要、あるいは話がついている方が多いのではないかと思います。

これらの仲介業者が行う仕事を省略することで、どのようなリスクが生まれるのでしょうか。

個人間売買のリスク・デメリット

重要事項説明を受けられない

仲介業者の役割として大きいものの一つに、重要事項の説明があります。

重要事項説明とは、契約前に、宅地建物取引士の捺印がしてある書類で、買主に対し対面で説明をする手続きです。これにより宅建業者は仲介手数料をもらって仲介業務を行うことができます。仲介業者は説明に間違いがあってはならないため、かなりの項目を念入りに調査することになります。法令面でのチェック・情報伝達という重要な役割を担っているのです。

重要事項説明書は、間違いがあると損害賠償や行政処分が下される可能性もあるので、宅建業者は慎重に作成、説明を行います。

重要事項説明の内容

重要事項の説明内容は、「不動産の表示」「現在の権利関係」「法令上の制限事項」「道路」「設備の状況」「取引条件」というようなものがあります。

たとえば、現在の権利関係は現在の所有者の確認や抵当がついているか、ついている場合はどのようなリスクがあるのかを説明します。法令上の制限では、地域によって土地は用途が決まっているなど制限がかかっていることもありますが、そのことを調査し買主に報告します。

道路は今後の建築や周辺との権利関係に大きな影響を与えるところです。設備の状況は重要事項で説明することにより、客観的な状況を確認します。これらの膨大かつ責任ある調査を、仲介業者は実施しているのです。

重要事項説明の意義

また、このような調査を契約前に実施することで、一般のお客が気づいていないような不具合や問題点を洗い出し、契約前に売主買主双方に注意を促し、解決できることは解決し、わだかまりなく契約・引き渡しを行うことができます

なお、重要事項説明は宅建業法上では買主のみに実施すれば足りますが、売主にも署名捺印をもらうことも多くあります。このような法令で定められた調査・説明事項を個人間売買では行うことができません。これは大きなリスクとなります。

契約の条件が決まらず、トラブルが発生する可能性

売買取引の契約条件は単に価格を決めるだけではなく、手付金を支払って引き渡しの時期と方法を約束する「契約」、実際に売買代金を支払って物件の引き渡しをする「決済」というプロセスを踏むのが一般的です。

不動産取引では大きな金額が動いて所有者が変わるため、不動産業者は案件ごとにさまざまな条件をつけながら契約条件を決めていきます。不動産業者は過去の経験や物件の特徴、売主、買主双方の背景と利益を考え、トラブルを未然に防げるよう契約条件を決めます。

個人の取引では、お金や条件に関するトラブルを未然に防ぐための経験について、どうしても不動産業者より劣ってしまう部分があります。大きな売却代金の受け取りまでトラブルなく進めるのが、仲介業者の役目なのです

瑕疵担保責任の取り決め

瑕疵(かし)とは、売主が売るときに気づいていないような不動産の問題点(売りに出して契約を結んだときには気づいていなかったシロアリによる被害や雨漏り、地中の埋設物など)が発見されたときに、売主に対して責任を問うことができるという制度です。いわば買った人がつけてもらう保証のようなものです。

期間は、民法では「瑕疵(問題点)を知った日から1年」となっていますが、不動産を引き渡す際に結んだ契約の内容が優先されます。実務上は引き渡しから3か月という取り決めになるケースが多いですが、瑕疵が見つかりそうな古い物件は瑕疵担保責任なしにしたりするなど、売主・買主双方のメリットを仲介業者が調整して契約に盛り込むなどの作業も行なっています。

売主が不動産業者の場合、最低2年間は瑕疵担保責任を負う必要であると決められています。瑕疵は残念ながら知らなかったけど見つかってしまうというものですので、もし発見されたときはどのようにするのか、といった取り決めを行う際には仲介業者の出番です。そもそも個人間売買では、当事者同士では瑕疵担保責任期間の設定自体が難しい可能性が高いです。

2020年に施工予定の改正民法が適用されると、瑕疵担保責任は「契約不適合責任」に置き換わり、売主の責任が大きくなります。宅建業者や法律家を介さずに不動産取引を行うと、契約書の不備によって思わぬ損害を被る可能性もあるのです。

住宅ローンが使えない

不動産の個人間売買が行われない大きな理由に、金融機関は個人間売買に融資を下すことがほとんどないということが挙げられます。果たしてその売買金額は正しいものなのか? 取引自体も正常なものなのか? 取引に客観性がないので、個人売買に対して金融機関が審査をして融資をすることはかなり難しいのです

個人間売買の一つに家族間の譲渡がありますが、ローンも引き継ぎたいという話を聞くことがあります。残債と相場価格が見合っていないことも多いのですが、金融機関は相場で販売している物件に低利なローンをつけるので、もし金融機関に個人間売買を相談したら、ほぼ間違いなく住宅ローンで借り入れたお金を他の目的で使うのではないかという資金流用を疑われることになります。

そのため、フリーローンなどより低利な住宅ローンを利用しながら個人間売買で不動産を購入することはほぼ不可能です。家族間売買ではなおさら、贈与・相続などの複雑な問題が絡んでくるので金融機関には嫌がられることが多いようです。

仮に個人間売買が行われるケースを想定してみると、融資がつかないことが多いのを知らずに契約してしまい、借り入れできなかったためお金が用意できず、後から損害賠償を被るなんてことも考えられることです。このような取引上のミスは仲介業者が入る場合にはほとんど発生しません。

適正価格かどうか判断できない

今は、ネットである程度の調査ができるので、販売中の物件がどのくらいの価格で出ているかはわかりますが、なぜその金額になるのかという詳細な金額は、例えばリフォーム状況や設備、引き渡しの方法など物件によって変化します。仲介業者が査定価格を出すときには、取引事例や路線価、評価額を利用するなど、価格を述べる際に客観的な根拠を提示しなくてはならないと宅建業法で決められています。

税務上も、著しく低い金額で契約した場合は、その取引は贈与とみなされるケースがあり、その際は高い贈与税が発生することがあります。どこから贈与と判定されるかは税務署の判断になりますが、第三者である不動産業者の仲介を挟むことで、お互いが納得して契約したのに後から大きく税金を請求されるということも未然に防ぐことができます。

売主が不動産業者の場合の保護が受けられない

宅建業者が売主の場合に限った話ですが、売主がプロである宅建業者で買主がそれ以外であった場合、買主保護のルールが決められています。先ほどの瑕疵担保責任の期間が2年間という大きなメリットもありますし、手付金をもらう際はきちんと保全措置をとらなくてはいけない、買主に分割払いで買ってもらうときの制限があるなど、売主が宅建業者の場合には買主には安全が確保されているのです。

新築のマンションや建住宅などに多く、最近はリノベーションの中古マンションも宅建業者が自ら売主となって販売しているケースも多いようです。

仲介業者の役割は多岐にわたり、販売活動以外にも不動産取引を安全に行うという重要な役割があります。個人間の売買では仲介手数料がかからなくなる分、大きなリスクをはらんでいることもありますので注意してください。

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