築年数の古い家の売却・買取は可能?不動産の活用方法を解説

不動産売却の基礎知識
執筆者
切塗よしを

きりぬりよしを:ライター、小説家/政令指定市の行政マンとして都市計画法関連業務に従事、建築主事、建築専門学校非常勤講師の経験を有する/大阪文学学校賞、滋賀文学祭小説部門特選/ことの葉行政書士事務所代表
【保有資格】特定行政書士、既存住宅状況調査技術者(インスペクター)、建築基準適合判定資格者、終活カウンセラー、著作権相談員

築年数が30年以上も経過したような古い家は、はたして売却できるのでしょうか。買い取る側の立場になれば、築年数が古い家は問題点が蓄積していそうで、なかなか購入を決断することができません。築年数の古い家をスムーズに売買するための活用方法を探っていきましょう。

ちょっと待って! 古い家の解体はデメリットがあります

築年数が古い家の老朽化が著しいと、買い取る人などいないだろうと判断して、更地として売り出すことがあります。それも不動産売却をする有効な手段のひとつですが、更地にした場合に大きなデメリットが生じることを踏まえたうえで判断する必要があります。どのようなデメリットがあるのかみていきましょう。

更地にすると固定資産税が6倍になる

現在、建物が存在する土地の固定資産税は「住宅用地の軽減措置特例」によって、本来の税額の6分の1まで減額されています。これは200平方メートル以内の敷地に適用される特例ですが、200平方メートルを超える部分についても、3分の1まで減額されます。

更地にすると、この特例が適用されなくなるため、固定資産税額が最大で6倍に跳ね上がってしまうのです。

ただし家が建っていれば、必ず特例が適用されるというわけではありません。2016年5月に施行された「空家対策特別措置法」によって、倒壊の危険があると自治体が認めた空き家は、特定空き家に指定されることになりました。これに指定されると、住宅用地の軽減措置特例が適用されなくなるので、更地にした場合と同様の扱いになります。

つまり家が朽ちるまで放置しているとメリットは消滅しますが、定期的な管理を行うことで、家屋を一定のレベルで維持できるのであれば、売却できるまでの間、古い家を残しておいた方が固定資産税の節税になるのです。

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再建築不可物件を更地にすると家が建てられない

古くから建っている家の中には、道路に2m以上接していないなどの理由から再建築不可物件になっているものも少なくありません。再建築不可物件は、建物を解体して更地にしてしまうと、既存不適格の扱いが解除されるために、新築することができなくなります。

家を建てられない土地は、査定額が大幅に下がるばかりか、購入希望者がまったく現れないという事態もあり得るのです。

解体費用がかかる

古い家を解体して更地にする場合、当然のことながら解体費用がかかります。さらに更地として土地売却をするためには、ある程度見栄え良く整地する必要があります。こうした費用負担が生じる点もデメリットのひとつです。

築年数の古い家でも売却できるケース

国土交通省の統計によると、2013年の全住宅流通量のうち、既存住宅が占める割合は14.7%となっています1。これはアメリカの83.1%、イギリスの87.0%、フランスの68.4%と比較すると、極端に低い数値と言わざるを得ません。

一方で、10年単位でみていくと、1993年の10.15%、2003年の13.1%と既存住宅のシェアは伸びています。

低水準とはいえ、中古住宅を購入する人は確実に増えており、築年数の古い家も売却できていることがうかがえます

それでは、新築を購入する人が圧倒的に多いこの国の状況において、築年数の古い家がなぜ売却できるのでしょうか。ここでは、築年数の古い家が売却できる要因をみていくことにします。

立地に魅力がある

築年数の古い家を購入する人は、自分のライフスタイルに合った条件の物件を選ぶことがあります。

たとえば築年数が古い家の中には、周囲がビルに囲まれた都会の中心部に建っていることも少なくありません。鉄道駅が徒歩圏内にあり、なおかつ商業施設や医療機関が近くにある物件は、一般的には高値過ぎてなかなか購入できませんが、築年数の古い家だと比較的廉価で入手できるため、売却ができるのです。

反対に第二の人生として農業、林業、漁業等に従事したいと考える人にとっては、郊外の一軒家がとても魅力的に映ります。

また仕事をリタイアした年齢層の人達の中には、自然の景色に恵まれた空間で余生を過ごしたいと、見晴らしの良い中古住宅を探す人もいます。

古い建物自体に魅力がある

現在の住宅は、外壁をサイディングボード張りにした無機質な建物が主流になっています。古い家は、外壁が土塗り壁や焼き杉板張りなどの自然素材を用いた仕上がりであり、かつ柱や梁が露出した真壁構造で構築されたものが主流です。

現在、このような工法で建てようとすれば、工事ができる職人も少なく、費用も莫大なものになってしまいます。今では手に入りにくくなった伝統的な木造住宅に住めることに魅力を感じる人は大勢います。

用途変更によって再生可能である

ビルのテナントではなく、こじんまりとした店舗や事務所を構えたいという人は、リノベーションによって自分が思い描いた店構えになるような古い家を探しています。

買取専門の業者

築年数の古い家は、単に住宅として再生させるよりも、店舗や宿泊施設、福祉施設、貸家、シェアハウスなど新たな用途に活用することで蘇ることがあります。しかしそうした需要を個人が読み解いて買主を探し出すのは、とても困難を極める作業です。

中古住宅の買取専門の業者は、全国的な規模で情報を張り巡らせており、利用者のニーズを常に把握しています。

一般的な査定価格よりは安値での買取になりますが、まったく購入希望者が現れないケースを想定すると、買取専門の業者に売却する方法も有効な選択肢のひとつだといえます。

築年数の古い家が敬遠される要因は何か

総務省の住宅・土地統計調査によれば、空き家の総数は、この20年で448万戸から820万戸に増加しています。

この中には売却しようとしても、まったく購入希望者が現れない、築年数の古い家が相当数含まれています。なぜ古い家は購入を敬遠されるのか、その要因を探っていきましょう。

耐震性能に不安がある

近年の住宅は、いくつかの震災被害の教訓を経て、耐震基準を大幅に強化しています。このため従前の基準で建てられた古い家は、構造用合板やホールダウン金物等の耐震性の要となる建築資材が、まったく用いられていないことがあります。

和風テイストの外観に魅力を感じても、耐震基準を満たしていないことに一抹の不安が生じることで購入を敬遠されるのです。

構造材が腐朽している可能性がある

木材の大敵は水です。長期間水に触れていた木材はやがて朽ちていきます。また湿気を帯びた木材は、シロアリを招く要因になります。築年数の古い家は、雨漏りや水道管の漏れの発生やシロアリの被害によって、木材が朽ちていることを危惧されることがあります。

断熱材がない

築年数の古い家は、断熱材がまったく充填されていないことがあります。そのため冬の底冷えや夏の猛暑を懸念して、購入を敬遠することがあります。

設備機器がいつ故障するか分からない

築年数の古い家は、付帯している設備機器も旧式のタイプのものが多いため、故障による買い替えの負担を考慮して、購入をためらうことがあります。

再建築不可物件である

再建築不可物件を維持していくためには、リフォームで延命させるほかに術はありません。しかしどこまで手を加えることが可能なのかが、理解できないことが多く、古い家を買い取る人はなかなか現れません。

敷地境界があいまいである

現在地積測量図はGPSを活用した精度の高いものになっています。しかし古い家の土地は、精度が低い地積測量図が作成されています。また隣地との境界確定がされていない物件も多く存在しています。

敷地境界があいまいな物件は、購入希望者も不安要素が大きいので、なかなか売却することができません。

不安材料を解消して古い家を有効活用しよう

築年数の古い家であっても、古い家固有の魅力があり、購入を希望をしている人が大勢います。しかも築年数の古い家は、新築住宅と比べて廉価で入手できるために、不安材料を解消することで、さらに売買が促進する可能性は大きく広がるのです。

それでは具体的にどのような方法で、不安材料を解消すればいいのでしょうか。

土地家屋調査士に依頼して境界確定

土地の境界は地積測量図と現地の境界標が一致していることで確固たるものになります。しかし築年数の古い家は、地積測量すら行われていないことが少なくありません。

敷地境界があいまいな場合は、土地家屋調査士に依頼して、改めて土地の測量をしてもらいましょう。隣地の所有者立会いの下、境界を確定することで、土地の境界にまつわるトラブルは解消できます。

境界確定の際に隣地の所有者と境界確認書を交わしておくと、購入希望者の危惧がさらに軽減できます。

建築士に依頼して用途変更のリノベーション

購入を希望する物件を用途変更して使用したい場合は、建築士に相談する方法が最適です。古い家の柱や間仕切りの撤去など、どこまで実施が可能かの検証をしてもらうことができます。

また100平方メートル以上の面積を飲食店、物販店舗、旅館等に用途変更する場合は、用途変更の建築確認申請が必要になります。建築士に依頼をすれば、こうした手続き面でのアドバイスを受けることができます。

ホームインスペクターに依頼して不安を解消

ホームインスペクターへの依頼は、売主側、買主側ともにとても重要です。

売主がホームインスペクターに依頼した場合、売却前に住宅の状況を把握することができます。状況によっては、修繕をしたうえで、売却に臨むことができます。あるいは事前にこうした不備を明らかにすることにより、瑕疵担保責任や改正民法施行後の契約不適合責任に問われるリスクを軽減できるのです。

また古い家のホームインスペクションを実施した証明書を提示することで、購入希望者に安心を与える効果があります。

買主の側がホームインスペクターに依頼する意義は、購入を決断する重要なデータになるという点にあります。住宅の不備状況を把握することで、許容範囲を超えているかの判断が可能になります。

まとめ

ここまで、築年数の古い家の売却や買取は可能かについて説明をしてきました。

築年数の古い家の購入希望者のポテンシャルは十分にあります。それが実際の購入になかなか結びつかないのは、中古住宅への信頼性が大きく損なわれていることが主な要因です。

現在、宅建業法の改正により、宅建業者が専門家による建物状況調査(インスペクション)の活用を促すことが求められています。築年数の古い家も安心して購入できる環境を実現するためにも、ホームインスペクションの積極的な活用が望まれます。

  1. 参考:平成30年度 住宅経済関連データ|国土交通省
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