家を売る時、買主から値引き交渉された。正しい対処法とは?

不動産売却の基礎知識
執筆者
切塗よしを

きりぬりよしを:ライター、小説家/政令指定市の行政マンとして、都市計画法関連業務に従事、建築主事、建築専門学校非常勤講師の経験を有する/大阪文学学校賞、滋賀文学祭小説部門特選/ことの葉行政書士事務所代表
【保有資格】特定行政書士、建築基準適合判定資格者、終活カウンセラー、著作権相談員

自分の家を売りに出した際に、買主から値引き交渉をされることがあります。希望価格で売却できるのがベストであることは言うまでもありませんが、現実はそう甘くはありません。それでは、買主の値引き交渉にはどのように対処をすればいいのでしょうか。不動産の値引き交渉に対する正しい対処方法を解説していきます。

値引き交渉はどのようにして始まるのか

家の売却活動をした際に、どのようにして値引き交渉が持ち込まれるのでしょうか。

購入希望者が内覧を済ませると、やがて仲介の不動産会社を通じて「買付証明書」が届けられます。買付証明書は購入の意志を示す書類で「購入申込書」と呼ぶこともあります。

この買付証明書には、希望購入価格が記入されています。ほとんどのケースで売り出し希望額を下回る金額が記載されています。売主は、これに対してどう対処するのかということを回答します。

値引きの限度額は最初から想定しておく

現在の中古住宅、中古マンション市場では、売り出し価格を値引きして契約するということが一般的になっています。売り出し価格どおりに売却できることは、まずないと考えた方がいいでしょう。

80万円を上乗せする

そのため理想とする売却価格に80万円、90万円の端数をプラスして売り出すという手法が、頻繁に用いられます。たとえば本音は3,300万円で売却できればいいと考えているとすれば、3,380万円で売りに出すのです。

これには2つの効果があります。ひとつは一見安い印象を与えることができるということです。3,380万円と3,400万円では実際には20万円の差額に過ぎませんが、購入者の心理として大台の数字が100万円違うと、ずいぶんと安いと感じることがあります。

もし購入希望者が3,300万円が購入限度額だと想定しているとすると、実際には予算オーバーしていても、3,380万円の物件は購入候補にリストアップして、3,400万円の物件は対象から外してしまうということもあり得るのです。

もう一つの効果は「値引きしろ(余地)」です。購入希望者に対して80万円も値引きしたという妥協の姿勢を見せることができます。

ただし、この手法は現在では一般的に使用されているため、端数を値引きするのは当然だと捉えている買主だと、値引きの効果が思ったよりも発揮できないことがあります。

値引きを交渉する2つのタイプ

それではどうして購入希望者は、値引き交渉をしてくるのでしょうか。大きく2つのタイプに分類できます。

ひとつは、現在の中古住宅市場に精通をしていて、値引きが当然だと考えているタイプの人です。この場合、売値のままで購入をすると、あたかも大きな損失をしたかのような感覚に陥ってしまうので、値引きがない物件を購入することに対して強い抵抗感が生じるのです。

もう一つのタイプは、住宅ローンと自己資金を合わせた限度額がシビアに決まっているタイプの人です。この場合は、自分が捻出できる金額を上回る額を提示されると諦めざるを得なくなります。

もしこの購入限度額が決まっている人が、唯一の購入希望者である場合は、慎重な交渉が必要になります。強気で値引きを渋ると、相手が早々に諦めてしまう可能性があるからです。

こうした交渉タイプを見極めるには、ある程度の事情を把握している不動産会社の情報が頼りです。不動産会社の担当者から、しっかり情報を入手して、相手がどのような理由で値引き交渉をしてきているのかを踏まえることが重要です。

値引き交渉はどのように妥協点を見出すのか

購入希望者が、売り出し価格3,380万円の物件に対して、3,000万円で購入したいと買付証明書を提示してきた際には、どのように対応すればいいでしょうか。

実に380万円の値引きになるのですから、容易に妥協できる話ではありません。まずひとつの判断材料にするのは、当該物件がどれだけ注目を集めているのかという点です。

不動産会社にあちこちから問い合わせがきていたり、内覧の日程調整が必要だったりする状況であれば、これほど大きな額を妥協をする必要はありません。しかし、売却活動を始めてから1カ月経過してこの希望者だけだとしたら、かなり真剣に考える必要があります。

不動産会社との仲介契約期間の3カ月が過ぎて、契約更新をするような時期になるまで売却できなかったら、3,000万円どころか、さらに下回る価格で売り出しを余儀なくされる事態も十分に想定できるからです。

本筋から外れた交渉には妥協する必要はない

とはいえ、値引き交渉には、妥協してもよい事情と聞き入れる必要がない事情が存在します。そのためには、まず交渉に入る前に、相手がどういった理由で値引きを求めているのかを知る必要があります。

たとえば、壁クロスが破れているから補修をする必要があるとか、収納庫の棚がないので取り付ける必要があるといった、相手方の事情による値引き交渉にはまったく応じる必要はありません。

そうした目に見える不備を含めて価格決定をしているのですから、それを補修するための費用の面倒を見ろというのは、まるで次元の違う話だからです。

補修費用を前提にした交渉を進めると、さらなる値引きを迫られる可能性が大いにあるという点にも注意しておきましょう。

購入希望者には購入の意志がある

購入希望者が3,000万円であれば購入するという意志を示しているということは、相手方には強い購入の意志があるということです。それを前提に交渉を進めましょう。

ひとつは380万円の差額の真ん中をとって3,190万円で妥協するという方法があります。しかし当初の目論見であった3,300万円からもさらに110万円も値引きするのには、どうしても抵抗があるということであれば、せめて50万円は妥協して、3,250万円が最終価格の提示だとする方法もあります。

購入希望者からすれば、端数の80万円を引かせたばかりか、さらに50万円も値引きできたのですから大きな収穫といえるでしょう。

そもそも買付証明書に記載した金額どおりに売主が売却してくると考える人はまずいません。そのために、だめで元々という考えに基づいて希望金額を提示しているのです。したがって売主が「私としては3,250万円がぎりぎりの金額です。もうこれ以上下げることはできません。」と強い意志表示をすることで、相手も納得をして妥結することは十分にあり得るでしょう。

住宅ローンの審査状況にも注意を

中古住宅は売り出しの期間が長くなればなるほど、売却価格は下がっていきます。売却に際しては積極的に広告を配布していますから、周囲の人はいつ頃から売り出したのか承知しています。長い間売れない物件は、何か問題のある物件ではないかと疑心暗鬼の目でみられたり、見下されたりすることで、どんどん価格が下がってしまいます。

そのため、購入希望者が現れた際には迅速に交渉を進める必要があります。ところが契約を前提に交渉を進めていた相手が、最終的に住宅ローンの本審査を通過しなかったという事態になれば、売却活動は結局振り出しに戻ってしまいます。

それどころか1カ月前後の期間が無為に過ぎていますから、売却活動上も大きなダメージを受けることになるのです。このため値引き交渉以前に、相手が交渉相手となり得る人物であるかを判断する必要があります。

住宅ローンは、仮審査を通過していれば、ほぼ本審査が通る確率は高くなります。したがって購入希望者の住宅ローンの審査状況を把握することは必須です。さらに勤務先や年収などの情報を可能な限り不動産会社から聞き出すことも重要なポイントになります。

まとめ

中古住宅の売買においては、値引き交渉はまず避けて通れません。端数の値引きはもはや常態化しており、真の交渉はそれ以上の値引きを求めるところから始まります。

少しでも有利に交渉を進めるためには、常日頃から近隣の取引状況に目を光らせるなどして、より正確な実勢価格を把握しておくことが肝心です。交渉は弱気過ぎれば相手の有利になり、強気過ぎれば相手に逃げられてしまいます。物件の真の価値を知ることで、交渉のさじ加減も巧みに調整することができるのです。

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