古家付きの土地は更地にして売る方が得をする?メリット・デメリットを解説します

不動産売却の基礎知識
執筆者
切塗よしを

きりぬりよしを:ライター、小説家/建築主事や都市計画法関連業務の行政経験を有す/小説の分野では大阪文学学校賞、滋賀県教育長賞を受賞/ことの葉行政書士事務所代表
【保有資格】特定行政書士、既存住宅状況調査技術者(インスペクター)、建築基準適合判定資格者、終活カウンセラー、著作権相談員

築20年を超えた住宅は、売却の際には「古家付きの土地」として売り出されるのが一般的です。つまり住宅に対する売値はなく、土地のみを販売対象としているということです。このような古家であれば、むしろ解体をして更地として売る方が得をするという声をよく耳にします。

はたして古家付きの土地は、本当に解体した方がいいのでしょうか。古家付きの土地として売却する場合と更地を売却する場合を比較してみましょう。

古家付き土地で売るメリット

販売上は無価値とされる古家ですが、あえて家を残したままで売却するとどうなるのでしょうか。古家付き土地が無事に売却できるかは、買主にとってどれだけのメリットがあるかが大きな要因となります。まずは買主側の立場から、どんなメリットがあるのか見ていきましょう。

すぐに住むことができる

直前まで売主が居住していた家であれば、買主は契約後すぐにその家に住むことが可能になります。転勤による急な引越しや以前住んでいた家を売却した場合でも、仮住まいを経ることなく入居できるので、費用面の節約になります。

新築したときのイメージができる

更地だと実際に家を建てた際の状況がイメージしづらい面があります。古家があると、いわば原寸大の模型があるようなものですから、家からの見晴らしや日当たりの状況等を自分の目で確認することができます。

住宅ローンを融資してもらえる

更地を購入する場合は、住宅ローンは融資してもらえません。融資してもらえるのは、家の設計が完了して、施工会社と工事請負契約を締結した段階になります。古家付きの土地だと、住宅ローンの融資対象になりますから、資金繰りの面でも購入できる条件が整います。

再建築不可物件でも住むことができる

再建築不可物件を更地にすると、もうその敷地に家を建てることはできません。古家付きの土地だと、たとえその土地が再建築不可物件であっても、住み続けることが可能です。

既存不適格のまま維持できる

建ぺい率の指定がなかった時代に建てられた住宅の中には、現在指定されている建ぺい率を超えるものが存在しています。こうした建物は、いったん更地にすると、次に新築する際は指定建ぺい1内に納める必要があります。

しかし、古家付き土地の場合は、構造材に大きく手を加えなければ、たとえ指定建ぺい率を超えていても既存不適格建物として合法的に存続することが可能なのです。一定規模を有する住宅が必要な買主にとっては、古家付き土地の方がメリットがあることになります。

固定資産税が安い

建物が存在する土地の固定資産税は「住宅用地の軽減措置特例」が適用され、最高で本来の税額の6分の1まで減額されます。更地にすると、この特例が適用されないため固定資産税額も最大で6倍に跳ね上がります。

固定資産税はその年の1月1日時点の所有者に課せられます。売主の立場だと、更地にしていつまでも売れないと、高くなった固定資産税を払い続けることになります。その点、古家付きの土地であれば、特例措置が適用されるので、腰を落ち着けて売却活動を進められます。

古家付きで売るデメリット

反対に、古家付きの土地で売る場合のデメリットを把握しておきましょう。

瑕疵担保責任がある

いくら無価値の住宅とはいえ、住宅を売却した限りは、瑕疵担保責任を問われることがあります。これを避けるためには、売買契約に瑕疵担保責任免責という特約をつける方法がありますが、その場合であっても想定外の不備が明らかになれば、買主から責任を追及される可能性は否定できません。

解体する手間がかかる

買主が新築の住宅を建てる予定をしている場合は、古家付きの土地だと解体の手間がかかるために、購入を見合わせることがあります。また購入に際して、解体費用相当分の値引きを求められることがあります。

地中障害物が発覚する可能性がある

古家付き土地を購入した買主が、古家を解体したことによって、地中埋設物が掘り起こされることがあります。この場合、買主から地中埋設物の撤去費や処分費を請求されることになります。

更地にして売るメリット

それでは古家を解体して更地にして売るとどのようなメリットがあるのでしょうか。

売却しやすい

更地にすることで、いろいろなニーズをもった買取希望者に対応できます。特に家が建て込んでいる都心部では、更地自体が珍しいので、購入希望者も多く、売却活動を始めたばかりの早い段階での売却が期待できます。また住宅に限らず、駐車場として土地利用したい人にも売却が可能になります。

査定額が高くなる

更地の物件は売却しやすいために、査定額も古家付き土地よりも高くなる傾向があります。

瑕疵担保責任が発生しない

瑕疵担保責任の対象となる建物が存在しないので、売却後買主から瑕疵責任を問われる心配がありません。

地盤調査ができる

更地にすると地盤調査が容易に実施できます。基礎の支持層が浅い位置にあることが判明すると、さらに高い価格での売却が期待できます。

更地で土地を売るデメリット

更地で土地を売るデメリットは、古家付きの土地を売却する際のメリットが消滅することです。具体的には、次のようなことが挙げられます。

  • 買主が、この土地に住むまでに日数を要する
  • 新築をしたときのイメージがしにくい
  • 住宅ローンを融資してもらえない
  • 再建築不可物件は建築ができなくなる
  • 既存不適格が適用されなくなる
  • 固定資産税が高くなる

更地で売った方が得なケース

古家付きの土地の売却に関するメリットやデメリットは分かりました。それではどのような土地であれば、古家を解体して更地で売った方が得だといえるのでしょうか。

交通の便が良い土地

交通の便が良い土地や商業地に近い土地は、土地そのものに人気が集まりますから、更地にした場合の査定が高くなります。

古家の解体は、1坪当たり4万円が相場であることから、120平方メートル程度の標準的な住宅だと解体費が150万円になります。これだけの費用を注ぎ込んでも、更地にした方が高く売却できる見込みがあれば、更地にして売った方が得だといえます。

早期の売却が見込める土地

更地で売却するデメリットとして、固定資産税が高くなるということがあります。たとえば、現在年に10万円の固定資産税を納めているとすれば、更地にした翌年から固定資産税は60万円になります。

この状態が何年も続くとしたら、やはり古家付きの土地のままにしておいた方がメリットあるといえますが、周囲の取引状況等から早期の売却が見込めるのであれば、更地にして売却した方が得だといえます。

古家付き土地で売却した方が得なケース

それでは古家付き土地で売却した方が得なのはどんな住宅なのでしょうか。

伝統的工法で建てられた住宅

古家付き土地のままで売却した方が得なケースは、家そのものに魅力がある物件です。伝統的な工法で建てられた住宅は、現在ではあまり建てられなくなっており、希少価値のある存在になっています。

このような物件をリフォームして、新しい事業を展開したいという人や老後は落ち着きのある住宅に住みたいと望む人などニーズは様々です。このため、ある程度立地条件が良く、かつ昔ながらの伝統的工法で建てられた住宅であれば、古家付き土地で売却した方が、評価が高くなることがあります。

インスペクションを実施した住宅

古家が敬遠されてしまうのは、どんな不良個所があるのか分からないといった、いわば「ブラックボックス」があるからです。買主のこうした不安を解消するためには、既存住宅状況調査(インスペクション)を実施する方法が有効です。

インスペクションを実施することで、重要事項説明の際に「建築状況調査の結果概要」を買主に提示できますから、安心して購入してもらえることができます。

インスペクションの実施は買主ばかりでなく、売主にもメリットがあります。古家付き土地で売却する場合の懸念材料である瑕疵担保責任を追及されるリスクが大幅に軽減されるからです。特に改正民法が施行される2020年4月以降は、引き渡し物件と契約書の不適合が問われることになりますから、引渡し前の綿密な調査は、ますます重要になります。

まとめ

古家付き土地の売却は、更地にした方が得か損かの判断は、物件の状況によって異なってきます。

売却したい物件の魅力が何であるかを見極めたうえで、その魅力を最大に生かせる形で売却することが、取引を成功に導くことになります。最善手を選択して、気持ちよく売却を進めましょう。

  1. 敷地面積に対する建築面積の割合のこと。
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