不動産の「買取保証」はどんなシステム?仲介売却との違いやメリット・デメリットを解説

不動産売却の基礎知識
執筆者
切塗よしを

きりぬりよしを:ライター、小説家/政令指定市の行政マンとして都市計画法関連業務に従事、建築主事、建築専門学校非常勤講師の経験を有する/大阪文学学校賞、滋賀文学祭小説部門特選/ことの葉行政書士事務所代表
【保有資格】特定行政書士、既存住宅状況調査技術者(インスペクター)、建築基準適合判定資格者、終活カウンセラー、著作権相談員

家を売却する際に「買取保証」を不動産会社から提案されることがあります。これは、自宅の売却が成立しなかった際には、最終的に不動産会社が買い取ることを保証してくれるというものです。では、「買取保証」にすると、どのような流れで家の売却活動が行われるのでしょうか。この記事では、仲介売却との違いや「買取保証」のメリットとデメリットについて解説します。

買取保証は最終的に不動産会社が買い取る

買取保証とは、一定期間(3カ月が多い)不動産会社と専属専任媒介契約を結び、売却できなかった場合に、不動産会社が予め提示した金額で買い取るというシステムです。

不動産の売却には「仲介」と「買取」の二つの方法があります。仲介は一般的な売却方法で、不動産会社が売主と買主の間に入って取引をまとめる方法です。買取は、売却活動を行うことなく不動産会社が直接買い取る方法です。「買取保証」と区別するために「即時買取」という言い方をすることがあります。買取保証は、仲介と買取の両方の利点を活用した方法だといえます。

買取価格は、市場相場価格の概ね80%程度だと言われています。条件が良いと、もう少し有利な価格になることもありますが、反対に課題がある場合は大きく価格が下げられることもあります。

買取保証のメリット

買取保証は、仲介と買取の両方の方法を兼ね備えていることから、さまざまなメリットがあります。

資金計画が立てやすい

仲介による売却だと、売り出し価格どおりに成約できるかは不確定なため、買い替える住宅の価格や住宅ローン融資額を決めかねることがあります。

買取保証は、不動産会社が買い取る金額が予め決められているので、最低限確保できる資金が確実に見込めます。そのため、購入する住宅の資金計画をしっかりと立てることができます。

スケジュールが管理できる

仲介による売却だと、状況によっては何年も売却できないことがあります。転勤や子どもの進学などのスケジュールが決まっているのに、いつまでも売却できなければ、新居を構えることもできません。

買取保証だと、最終的に買い取る時期が決まっているので、スケジュールどおりに新居購入を進めることができます。

つなぎ融資をしてもらえることもある

買い替えをする場合、新居の購入には元の家の売却金を見込んでいることがほとんどです。このため実際に家が売れて現金が手に入らないことには、新居を購入することはできません。

買取保証は、最低限の売却額と最終売却日が決まっているため、金融機関によっては、買取保証があると、家が売却できるまでの期間「つなぎ融資」をしてくれることがあります。つなぎ融資は住宅ローンに比べて金利が高く設定されていますが、長くても三カ月間の融資なので、利息もあまり負担になりません。

仲介期間中は市場価格で売却できる

買取保証は、当初は一般の仲介による売却と同じ方法で売り出しているため、広告等の効果によって、購入希望者が現れることがあります。通常の仲介による取引とまったく同じなので、市場相場価格で売却することが期待できます。

買取保証の売却は、1カ月目は査定価格の15%程度増しで売り出します。2カ月目になると、価格を下げて査定価格で売り出し、3カ月目は査定価格の90%付近になり、最終的には、この価格で不動産会社が買い取ります。

このため、早い段階で売却できた方が売主にとっては有利な取引になります。

業者買取だと瑕疵担保責任が免除される

古い住宅の場合、綿密な調査をしないと、どんな瑕疵があるのか把握できないことがあります。売却後に買主から瑕疵担保責任を問われると、予想外の出費に頭を抱える事態にもなりかねません。

仲介で売り出している期間中に買主が見つからず、業者買取になった場合、専門家である宅建業者が買い取るため、瑕疵担保責任を問われることは一切ありません。

業者買取なら仲介手数料が不要

一般の買主に売却する場合、不動産会社に仲介手数料を支払うことになります。しかし、買主が見つからず業者買取になった場合は、不動産会社が直接買い取るので、仲介手数料は発生しません。

一般的な仲介手数料は「売却価格×3%+6万円」です。たとえば2,000万円で売却した場合、「66万円+消費税」となります。かなりの金額が不要になりますから、大きな金額の節約になります。

したがって、仲介売却で買い手が見つかりにくいような古い戸建て物件などは、早めに業者買取を利用して売却するのも賢明だと言えるでしょう。

近所に知られずに売却することも可能

売主が希望すれば、仲介による売却期間中であっても、近所の人に売却が分からないように、広告の配布をしない方法で売却活動を行うことができます。買主が見つかる機会は低減しますが、同時に内覧の機会も減るため、精神的負担が軽減できます。

不動産会社が選びやすい

仲介による売却の場合、一括査定に出しても、最高額で査定をしてくれた不動産会社が必ずしも最善とは限りません。その価格で売却できる保証はないからです。そればかりか、相場よりも高い価格で売り出したために、却って売却の機会を失ってしまうこともあります。

買取保証の場合、買取価格の最も高い不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶことで、最善の売却額が期待できるので、不動産会社の選択に悩むことがありません。

リフォームの必要がない

仲介による売却だと、家の汚れや不具合が気になり、ついリフォームをしてから売り出したいという気持ちになることがあります。しかし実際の取引では、リフォームに費やした金額が、成約価格反映されるとは限りません。

最終的に業者買取となる買取保証があると、あえて無理にリフォームを行う必要もないため、無駄な投資を未然に抑えることができます。

転売で利益が出たら還元してくれることもある

物件を買い取る不動産会社は、転売(買取再販)をして利益を上げることが最終目的です。転売された価格があまり高すぎると、査定を必要以上に下げていたのではないかと不審に感じる売主もいます。

そのため、買取保証をする不動産会社によっては、想定以上の高値で売却できた場合、利益の一部を元の所有者に還元してくれることがあります。

買取保証のデメリット

買取保証は、メリットばかりではありません。買取保証の活用に関しては、デメリットを理解したうえで判断をした方がいいでしょう。買取保証にはどのようなデメリットがあるのかみていきましょう。

買取価格は市場の相場よりも安い

買取保証は、買主が見つかれば、ほぼ市場相場価格で売却できますが、不動産会社が物件を買い取ることになると事情は違ってきます。不動産会社が買い取る目的は、リフォーム等の付加価値によって売却価格を引き上げて、利益をあげることです。

また、不動産会社は物件買取の際には、銀行からの融資で資金を調達しますから、手数料や利息を費やしています。さらには不動産登記の名義変更手数料などの費用も発生します。こうした費用を含めて利益をあげることになるので、自ずと買取価格は抑えられることになります。

実は査定価格が安い

買取保証は、査定価格の90%で買い取られるのが一般的です。それであれば、市場相場価格の90%だろうと考えがちですが、実は買取保証の査定額は、仲介のみで売却するときの査定額とは異なるのです。

買取保証の査定額は、仲介のみと比べて90%~95%の価格になるのが一般的です。このため、買取価格は、市場相場価格の80%~85%で算出されるケースが多くなります。

時間だけを無為に費やすこともある

一定期間買主が現れなかった場合、結局即時買取とほぼ同じ金額で買い取られることになります。即時買取が早ければ申し込みから数日で現金化できるのに対して、買取保証は何カ月かの期間を要します。結果として、この期間が無駄になるということもありえます。

売却活動を熱心に行ってくれないことがある

不動産会社が、利益を何で上げようとしているかによって、売却活動の力の入れ方が異なってきます。たとえば、買取価格を市場相場価格の80%だと想定してみましょう。仲介手数料は、次のようになります。

想定利益は、リフォーム代や銀行利息、手数料等に200万円を費やした場合で計算します。

買取価格仲介手数料市場相場との差額想定利益
1,000万円36万円250万円50万円
2,000万円66万円500万円300万円
3,000万円96万円750万円550万円

経費を差し引いたとしても、転売した方が仲介をするよりも利益が上がることが分かります。特に買取価格が高額だと、その差が顕著になります。

もちろん転売に際しては、さまざまなリスクも含まれていますから、一概に転売の方が不動産会社の利益になるとは言えませんが、転売で利益を上げることに魅力を感じている不動産会社も少なくありません。

最初から転売を目的としている不動産会社だと、熱心に売却活動を行ってくれないことがあるので注意が必要です。

査定価格が大幅に下げられていたら売却は期待できない

買取保証は査定額の90%で買い取ってもらえます。ところが、この査定額が何らかの事情で大幅に引き下げられていたとしたら、ますます仲介で売却できる可能性は減ります。

たとえば、市場相場価格が1,500万円のところを1,000万円と査定されたとします。この場合、買取保証額は900万円です。これで仲介取引をした場合、不動産会社の仲介手数料は「売却×3%+6万円」により、33万円です。

これを転売するとどうなるでしょうか。市場相場価格で売却できた場合、600万円の利益がでます。リフォームや手数料、銀行利息などに200万円かかったとしても、なお400万円が手元に残ります。

市場相場価格から大幅に査定価格が下げられた物件は、仲介手数料よりも転売した利益の方がはるかに大きくなるため、仲介による売却はあまり期待できません。

物件によっては買取保証ができないことがある

買取保証は、すべての物件が対象になるわけではありません。「交通の便が悪い」「再建築不可物件である」「市街化調整区域である」といった、購入希望者を見つけにくい物件は対象外です。

買取保証は、転売して利益を上げることが目的なので、一定の購入が期待できる層があり、リフォーム後に売却が見込める物件に限定されます。

買取保証は判断基準の確立がポイント

買取保証は、買取価格が予め提示されるために、その先の計画が立てやすい点が大きな魅力ですが、一方で不動産会社の主導で売却活動が行われる点に不安が残ります。たとえば、査定額が市場価格よりも大幅に低いとしたら、得られはずの資金をみすみす逃してしまうという事態にもなりかねません。買取保証を効果的な取引にするためには、売主独自の判断基準を確立することがポイントになります。

ここでは、買取保証を利用するにあたって、どのようにして判断基準を確立すればいいのかを解説します。

市場価格を把握する

買取保証においては、査定額が適正であることが大前提になります。このため不動産会社の査定とは別に独自の方法によって、市場価格を把握することが非常に重要です。ここでは、市場価格の調査方法について解説していきます。

路線価から調べる

路線価は、毎年国税庁が発表しているもので、相続税の査定根拠として用いられます。これは国税庁のホームページである「財産評価基準|国税庁」を開くと、全国の路線価を調べることができます。

財産評価基準書|国税庁
財産評価基準は、相続、遺贈又は贈与により取得した財産に係る相続税及び贈与税の財産を評価する場合に適用します。ただし、法令で別段の定めのあるもの及び別に通達するものについては、それによります。

路線価は、市場相場価格の約80%の価格で設定されています。買取保証額も市場相場価格の80%が一般的であることから、路線価と家屋の価格を合わせた額が、買取保証価格と大きく乖離していなければ、適正な価格であると判断できます。

固定資産税価格から調べる

固定資産税価格は、各市町村の固定資産税窓口やホームページで確認することができます。また家屋の価格は、固定資産税の納税通知書に記載されています。

固定資産税価格は、市場相場の約70%の価格で設定されているため、土地と家屋を合わせた評価額よりも買取保証額が1割程度高ければ適正な価格だと判断できます。

周辺の取引価格から調べる

国土交通省のホームページ「土地総合情報システム」では、実際に行われた取引の結果が掲載されています。これは取引関係者のアンケート結果を公表したものです。

国土交通省 土地総合情報システム Land General Information System

実際に成約した価格が分かるので、近隣の取引額が査定額の近似値であれば、適正な価格で査定されたと判断できます。

買取保証は複数の会社に依頼する

買取保証は、1社だけでやりとりをすると、その価格がはたして適正なものなのか判断できないことがあります。そのためには、複数の不動産会社に買取保証の見積りをお願いするという方法が有効です。

買取保証において価値のある取引とは、少しでも高値で買い取ってもらうことですから、複数の提示額の中から最も高い買取保証額を付けてくれた不動産会社に仲介してもらうことで、査定額に対する不安を払拭することができます。

まとめ

買取保証は、仲介による売却期間を経て業者買取が行われるために、売却価格にも納得したうえで売却することができます。業者買取になった場合でも、予め提示された金額で買い取られるために、新居の購入も計画どおりに進めることができます。

ただし信頼のおける不動産会社を選択しないと、最初から買取を目的として、売却活動を熱心に行ってくれないことがあります。買取保証は高値の査定をしてくれた不動産会社と契約をするのが基本ですが、仲介による売却活動を熱心に行ってくれなければ、買取保証の意味がありません。このため不動産会社の選定にあたっては、これまで仲介で売却した実績を確認しておくことも重要です。

買取保証で売却する場合は、仲介取引を積極的に取り組んでくれる不動産会社を選んで、悔いの残らない売却を実現しましょう。

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