不動産を売却する時に起こりやすいトラブルとは|よくある事例を紹介

不動産売却の基礎知識
執筆者
切塗よしを

きりぬりよしを:ライター、小説家/政令指定市の行政マンとして都市計画法関連業務に従事、建築主事、建築専門学校非常勤講師の経験を有する/大阪文学学校賞、滋賀文学祭小説部門特選/ことの葉行政書士事務所代表
【保有資格】特定行政書士、既存住宅状況調査技術者(インスペクター)、建築基準適合判定資格者、終活カウンセラー、著作権相談員

不動産の売却は高額の取引になるため、些細な行き違いから大きなトラブルに発展することがあります。でも、不動産の売却でどのようなトラブルが発生するのかを予め知っていたら、不安も解消するのではないでしょうか。この記事では、不動産を売却する時に起こりやすいトラブルの事例を紹介していきます。

不動産の売却ではどんなトラブルが発生しているのか

国土交通省が行った宅地建物取引業法施工状況調査(平成29年度)において、売買の「苦情・紛争相談件数」が公表されています。これによると平成29年度の相談件数は293件となっています。

相談内容の内訳は、次のとおりです。

1位:重要事項の説明(不告知を含む)  38.6%
2位:契約の解除(ローン不成立を含む) 13.7%
3位:瑕疵問題(瑕疵補修を含む)     7.5%

本調査は宅地建物取引業に関する調査であることを鑑みると、「重要事項の説明」に関することがトップになるのは当然だとしても、売主と買主の間に発生する「契約解除」や「瑕疵問題」も少なからずトラブルとなっています。

これらのトラブルはどのようなことが原因となって発生するのか詳しくみていくことにしましょう。

重要事項の説明に関するトラブル

重要事項の説明とは、不動産会社の宅地建物取引士が、不動産の情報について買主に説明するものです。しかし個人間の取引においては、不動産会社は仲介をする立場であり、ここで説明のなかった事項によって買主が不利益を被れば、最終的には売主が責任を取る立場になります。

それではどのような事柄について説明を欠けばトラブルに発展するのでしょうか。

敷地境界が確定していなかった

不動産の取引において、敷地境界線は最も重要な事項のひとつです。このため売買に際しては、地積測量図と境界標の位置を照合するのが一般的です。しかし境界標が抜けていたり、フェンスの内外で境界線の認識が隣家と相違していたりすると、買主が係争に巻き込まれることになります。

敷地境界があいまいな土地を売却する際には、予め隣家所有者と境界確認書を交わすことでトラブルを回避できます。

隣家の軒先が敷地を越境していた

隣家の軒先が越境していても所有権のある土地には変わりないので、こうした箇所も含めて売却をします。ところが他家の軒先に占有されている部分は、建築確認申請上申請敷地に含むことができません。これにより、想定していた規模の建築ができないと買主からクレームが付けられることがあります。

隣家に占有された土地を売却する場合は、まずは隣家に改善を申し出ることが優先ですが、解消できないときは、売却する土地の面積とは別に建築基準法上有効な敷地面積を明示することで後のトラブルを回避できます。

隣接する土地の用途地域が異なっていた

重要事項説明では、売却する土地の用途地域は説明しますが、周辺の用途地域まで説明することはあまりありません。ところが用途地域は、必ずしも隣接地と同じとは限らないのです。たとえば、売却した土地が第一種低層住居専用地域だったとしても、裏の土地が準住居地域だったということもありえます。

このため静かな住環境を期待して購入したのに、突然家の裏に葬儀場や工場が建設されて期待を裏切られてしまうということにもなりかねません。用途地域の境界線周辺にある物件は、周辺の用途地域の説明も欠かすことはできません。

目の前に高層マンションが建つ

マンションの売却でよく係争になるのが、眺望の良かったマンションの面前に別のマンションが建てられることです。売却時にまったく知り得なかったのであれば、大きな問題にはなりませんが、マンション建設業者が地元説明会を開催しているにもかかわらず、まったく説明をしていなかった場合はトラブルに発展することがあります。

埋蔵文化財包蔵地だった

売却物件が埋蔵文化財包蔵地にある場合、重要事項説明書の関係法令一覧で「文化財保護法」にチェックが付けられます。しかし一般の人には、これだけでどんな規制なのかは理解できません。

埋蔵文化財包蔵地で建築をする場合、着工の60日前まで市町村に届出をします。これを受けて文化財保護課の職員が、発掘調査が必要と判断すれば、数カ月は工事に着手できないばかりか、事業用の建物だと発掘調査費も土地所有者の負担になってしまいます。

埋蔵文化財包蔵地の物件を売却する際には、想定できる今後の展開を事前に説明しておかないと、トラブルに発展することがあります。

契約解除によるトラブル

契約解除は、売主の計画修正を余儀なくされるために、トラブルに発展しがちです。契約解除は、基本的にはお金で解決することになりますが、中には支払いを請求できない解約もあります。ここでは契約解除を未然に防ぐ方法を解説します。

買主の一方的な事情による解約

不動産の契約においては、契約時に買主が手付金を支払うことが慣例となっています。不用意な解約を防止するのが目的ですが、それでも引き渡しの直前になって、解約を申し出る買主は少なくありません。この場合予め契約書でルールが定められており、買主が手付金を諦めることで解約が成立します。

しかし売主の立場になれば、また一から売却活動を始めないといけないため、手付金には代えられない痛手を被ることになります。

手付金額は売買価格の5%~10%とされていますが、キャンセルを防止するためには、高目の設定をするといった工夫が必要です。また引渡し期日もできる限り短期間にした方がいいでしょう。ただし買主によっては、これに応じないで購入そのものを諦める可能性もあります。

買主が住宅ローンの審査に落ちたことによる解約

買主の多くは住宅ローンの融資があることを前提に契約を進めてきます。ところが、必ずしも銀行の審査に通るとは限らないので、審査に落ちてキャンセルをするという事態は比較的よくあります。このため住宅ローンを前提とした取引には、契約書に「住宅ローン特約」が付けられているのが一般的です。住宅ローン特約とは、審査に落ちて融資を受けられない場合は、解約ができるという前提の約束事です。これにより手付金は買主に返却されることになります。

手付金が残らないため、買主の一方的な事情による解約よりもダメージは大きいものになりますが、銀行の判断なので防ぎようがありません。住宅ローンの審査は年収や職業が大きなポイントとなりますから、不動産会社の情報収集能力に期待して、住宅ローンの審査を通過しそうな買主を探してもらうといったことが対策して考えられます。

瑕疵担保責任によるトラブル

売却後に住宅の不備が発見されてクレームを付けられるというトラブルがあります。いわゆる瑕疵担保責任を問われるものです。個人同士の売買では「瑕疵担保免責特約」をつけるのが一般的です。このため隠れた瑕疵が見つかっても責任を追及されることはありません。ところがいくら特約を付けていても、売主が事実を知りながら告げなかった場合は無効となり、損害賠償を求められることになります。

ここではどのような瑕疵を告げなかったら瑕疵担保責任によるトラブルに発展するのかを解説します。

過去に雨漏りがあったのにその事実を告げていなかった

雨漏りが発生すれば屋根の補修をして防水を施します。しかし長年雨漏りに気づかなかったために小屋組みの構造材が腐食していることがあります。屋根の補修を済ませたからと、過去の雨漏り履歴を告げないで売却をすると、後に小屋組みの腐食に気が付いた買主から瑕疵担保責任を問われることになります。

シロアリの被害や基礎のひび割れを告げていなかった

「瑕疵担保免責特約」で売却した物件で、売主が瑕疵担保責任を問われるのは、事実を知りながら欠陥を告げなかった場合です。このため本当に知らなかったとしても、少し注視すれば気が付くようなシロアリによる被害や基礎のひび割れなどは、所有者が知り得なかった瑕疵とはいえません。瑕疵担保責任を問われると責任を免れることは困難ですから、こうした事態を避けるためにも、売却前には入念なチェックが必要です。

インスペクションの実施でトラブルを回避しよう

近年、住宅を売却する際にインスペクションを実施する人が増えています。これは既存住宅状況調査技術者(インスペクター)によって、建物の状況調査をしてもらう制度です。住宅の目視できる範囲を入念に調査したうえで、調査結果は重要事項説明書に「建物状況調査の結果の概要」として書類添付されます。

これにより、買主から瑕疵担保責任を追及される可能性を大きく低減させることができます。

心理的瑕疵・環境瑕疵によるトラブル

心理的瑕疵とは、売却した物件内で自殺や殺人が発生したいわゆる事故物件であることを隠していた場合に問われる瑕疵です。また近所に反社会団体の事務所があったり、隣家の住民が有名なトラブルメーカーであったり、近所に大量のごみを放置している家があったりした場合、これを事前に買主に説明しないまま売却をすると、環境瑕疵として責任を問われることがあります。

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不動産会社との間に発生するトラブル

トラブルは売主と買主との間に発生するものばかりではありません。不動産会社との間に発生するトラブルもあります。不動産会社は全国に数多く存在していることから、会社の体質もさまざまです。必ずしも良心的な会社ばかりとは限らないため、売却に関するトラブルは後が絶えません。どのようなトラブルがあるのか紹介していきましょう。

いくら待っても不動産が売れない

不動産会社とのトラブルは、専門家だと過剰に信頼したあまり、説明を鵜呑みにしてしまうことで発生することがあります。

たとえば、せっかく高値で査定してくれた不動産会社と専属専任媒介契約を締結したのに、物件がいっこうに売れないということがあります。実際に購入希望者が現れないこともありますが、市場相場価格で売却しているのにもかかわらず、問い合わせすらないということであれば、不動産会社が「売り止め」をしている可能性があります。

他の不動産会社から「物件を見学したい」という問い合わせがあるのに「今は商談中です」とか「仮契約を済ませた」などといって、仲介の不動産会社が商談を断っているのです。

これはいわゆる「囲い込み」と呼ばれる悪名高い手法で、やがて不安になった売主の心理に便乗して売却価格を下げて、自らが探し出した買主や買い取り専門業者に売却するものです。これによって、不動産会社には売主と買主の両方から仲介手数料が手に入りますから、大きな利益となります。

なぜこうしたことが頻繁におこるのかといえば、手数料を売主と買主の両方から得ることに「旨み」があるからです。

もし2,500万円の売却価格を設定していた不動産を2,000万円で売却したとすると、仲介手数料は、81万円から66万円に下がりますが、買主も自社の仲介にすると、66万円の2者分の132万円の利益があります。このため仲介手数料が多少下がっても売主と買主の両方を仲介(両手仲介)する道を選択する不動産会社があるのです。

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さらにもう一度仲介することができる

買取専門業者が買い取った場合、今度はこの業者を売主として仲介をして、自社でこの物件の買主を探せば、もう一度売主と買主の両方を仲介することになりますから、ひとつの物件で4度も仲介手数料を手にすることができるのです。

しかし売主にしてみれば、本来得られたかもしれない利益を大きく損失しているのですから、こうした事実を知り得るトラブルに発展することがあります。

仲介手数料の上乗せや広告宣伝費を請求される

仲介手数料は宅地建物取引業法で「売買価格の3%+6万円+消費税」が上限と定められています。仲介に関して、他の名義であってもこれ以上の金額を請求することはできません。

また広告宣伝費も依頼主の依頼に基づいて行われた広告の実費を支払うことになっています。このため売主の伺い知らないところでなされた広告については、支払いの義務はありません。

しかし不動産会社によっては、コンサルタント料の名義で請求をしたり、頼んでもいない広告宣伝料を請求をしてきたりすることがあります。

こうしたトラブルを避けるためには、媒介契約に際しては、契約書にしっかりと目を通したうえで契約をすることが重要です。

まとめ

ここまで不動産を売却する際に起こるトラブルの事例を紹介してきました。

不動産の売却において最もトラブルの要因となるのが、買主が知らされていなかった事実が後に明らかになることです。たとえ価格を下げるネタだとしても、予め明らかにしておく方がトラブルの回避に通じるのです。

その意味で、売却前のインスペクションの実施は、建物の現況が専門家の目で明らかにされるので、トラブルを回避するのに有効な手段だといえます。

不動産の売却は明朗に進めて、次のステージを快適なものにしていきましょう。

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