不動産売買におけるIT技術の活用|業界の問題点と解決策、サービスの事例も紹介

不動産売却の基礎知識
執筆者
西原 太

宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP) 
プリズム・エージェンシー株式会社 代表
不動産の売買・賃貸仲介の経験から、不動産仲介をコンサルティングサービスととらえ、お客様に寄り添いながらより満足のいく仲介・正しい情報提供を目標に日々営業中。東京都葛飾区出身
得意分野:不動産売却、資産活用、法人、医療分野

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昨今、不動産取引においてITを活用しようとする流れが加速しています。

不動産の流通分野では物件に関する情報を複合的に取り扱っているので、ITとはうまく融合できるのではないかと思われており、物件情報や手続きなどで期待されている部分が多くあります。これから進化していく分野ですが、一方でなかなかIT化は進んでいない現状もあります。今後不動産の売買にIT技術がどのように関わっていくのかを見ていきましょう。

期待されているIT技術

不動産業界におけるIT技術の活用として期待されているのが、「情報の非対象性の解消」です。

情報の非対象性の問題とは、プロである不動産業者と一般消費者が持っている情報に差があることで、購入者や売却者が相場に適った取引ができていないのではないかということです。たとえば、売却の際に重要なのが価格や売却方法の情報ですが、今までは十分に消費者に提供されていなかったという問題点があります。

本来、不動産の売却情報は、ITとの親和性が非常に高いものと思われていましたが、不動産業界独特の商慣習によりなかなか普及してこなかったという側面があります。

そんな中買い手は未公開情報により価値を感じる傾向もありますし、売り手は場合によっては個人情報保護の観点もあり売却事例がオープンならないことも見受けられます。これらの情報がどんどん公開されていくと、売却者や購入者は適正価格での取引が成立しやすくなることが期待されています。

人口減少時代からも不動産流通はより注目される

平成30年度は、前年よりも新規住宅着工件数は0.7%増の約95万戸だったそうです。新規の住宅がそれだけ供給されていますが、人口や世帯数はどんどん減少しています

実際購入することが多い生産年齢人口(15歳~64歳の人口)は毎年1%程度減少していて、2040年ころは前年比1.8%程度まで減少することが推測されています。

人口や世帯数が減少し新規の住宅着工件数が多いということは、それだけ人が住まなくなる住宅が多くなると示されています。空き家の増加は現在も社会問題化していますが、より加速していくことは人口動態からはっきりしています。

日本経済はある程度新規住宅の建設により下支えされている部分もあるので、空き家になっていくのか、あるいはまた資産として復活できるかは、購入する側のニーズに合わせて中古物件を用意できるかにかかっています。

中古物件を購入する側にとってみると、劣化状況などの正しい情報が提供されているかが重要なポイントとなるので、ITを活用したプラットフォームの整備や情報提供は今後より社会問題化していくと推測される空き家問題の解決策の一つとして大きく期待されます。

ITを不動産流通に活用しているアメリカの事例

ITの活用が著しいアメリカの不動産流通システムは、不動産の価格の透明性、取引の公平性を日本よりも重んじる傾向があるため、売買情報は基本的に公開されています。すると直接、または仲介業者を通じて公平に売買情報にアクセスでき、売却側・購入側双方とも物件の価格が適正かどうか、物件情報も公開されているかがわかるようになっています。

zillowで公開されている物件の情報

Zillowでは、物件の情報が誰でも確認できるようになっている。

日本でも不動産にIT技術を用いて不動産流通を活性化しようという流れがあります。その流れを加速させるには売主・買主双方にとって情報公開のメリットを感じてもらえることや、既存の仲介業者を含むプラットフォーマー全体で公正公平な取引を推進するという強い意識が必要となるでしょう。

不動産流通でITを活用できるポイント

具体的に不動産流通でITを活用できるポイントは、

「価格情報」「販売情報」「物件情報」です。それぞれどのような活用方法があるのか見ていきましょう。

価格情報

不動産の取引価格は、たとえば国土交通省の不動産取引価格情報検索システムで取引事例の確認が可能ですし、ネット上で現在の販売価格も確認が可能です。しかしながら、掲載されているのは取引の一部で、事例の数は決して多くありません。

より具体的な金額を知りたい場合は、不動産業者に直接問い合わせをしたり一括査定サイトを利用する方が多いです。

その際に、売却希望者は基本的には高い金額での売却を希望しています。そして、一括査定サイトは多くの会社が参加しているため、交渉権を得るために査定金額も高くなりがちです。

しかし、査定額は直接不動産業者が購入する際の金額ではなく、「この価格で買い手が見つかりそうですよ」というあくまでも見込みの値段です。一括査定サイトは不動産業者にとって大切な集客ツールで、その分競争が激化していてコストも増大しています

現在、売却まで至るための集客コストはおよそ1/3程度になると言われています。その集客コストを回収するにはおのずと業者間の競争が激化、査定価格の上昇を招きます。一括査定サイトを利用する際は、査定価格の根拠をよく確認し、何より信用のできる会社、営業担当者を探すツールとして使うことをおすすめします。

仲介会社は、「高ければ売りの依頼を受けやすい」「安ければ実際に売りやすい」ため、まず高い査定を出して徐々に価格を下げていくケースも少なくありません。売主の高値売却の期待もありますので手法としては正しい場合も多いですが、その方針を十分売却希望者に伝えられていない場合は大きな不満となることも少なくありません。

最近は、特にマンションを中心にAI技術も活用し実際の売却価格を算出できるサービスも増えてきています。価格情報を一括査定サイトに出さずとも、人間の恣意性を排除した価格を過去の販売事例から算定できるようになってきました。現在そのようなサービスはどこも取引事例をAIに学習させているような段階です。どんどん精度は上がると予想されますので、将来は物件価格ももっと簡単にわかるような日も近いのでは無いでしょうか。

販売情報

物件の販売情報は、インターネットの普及により、以前よりも簡単にたどり着くことができるようになりました。販売に出した際は購入希望者向けのサイトを見るなどで確認をすることが可能です。最近の購入希望者のほとんどはインターネットで物件を見つけており、写真の多さで物件を選ぶ購入希望者が増えてきているというアンケートも示されています。

ポータルサイトの普及で物件情報に簡単にたどり着くことができるようになりましたので、より正しい情報を視覚的に伝えられるかが、成約へのポイントになっています。

不動産物件の販売情報で気をつけなくていけないのが、業界の悪しき慣習「囲い込み」です。

不動産仲介業者は、売主、買主双方から仲介手数料を受け取ることが可能です。そのため、売主から販売の依頼を受けた物件を、他に紹介せず自社の購入希望者だけに紹介するということで、他社からの紹介のお客様よりも多くの手数料をもらうことが可能です。売主にはメリットはありませんので、販売活動をどのように実施しているか、(専任媒介の場合は)囲い込みを実施していないかなどを正しく教えてくれる営業担当者を見つけることが重要になります。

一方、購入希望者は潜在的に、表に出ていない物件を好む傾向もあります。「未公開」や「限定情報」などの存在がまさに情報の非対称性となって存在しているのです。購入の際に情報をもっと探せばあるのではないかという気持ちも、実はIT化を妨げている要因の一つとなっています。

このような感覚は取引現場では案外うまく働くことも実際はありますので、業界全体のIT化を進めるにあたっては、プラットフォームの信頼性や情報の正確性がカギになるでしょう。

物件情報

不動産は二つと同じものがなく、中古物件であれば使用状況や経年などで物件の状況が大きく変わります。2018年の宅建業法の改正により、取引の際に建物状況調査(インスペクション)を実施したかを説明し、実施した場合はその結果を説明する義務を負うこととなりました

これは、中古物件の信頼性を上げるために、積極的に建物状況調査を実施することを推奨したものです。しかし、現状ではインスペクションの実施には売主側の許可を得られないケースもあり、中古物件の購入にはまだ不安を抱える人が多いです。

売主は今後、2020年の民法改正により瑕疵担保責任が契約不適合責任に変わるので、正しい情報提供を購入者側に提供する義務が生じるようになります。建物の劣化などの情報をIT技術により公開し、購入者にも共有することで、中古住宅市場が活性化すると考えられます。正しい物件情報は不動産流通の根幹をなす大切な情報なので、IT化により透明化が進むのが望ましいと言えるでしょう

IT化の事例

イエシルの例

イエシル https://www.ieshil.com/

不動産の価格情報は、すべてが一点もののため価格情報が出しづらい部分もありましたが、特にマンションに限ってみれば取引事例を中心に算定します。価格の提示が一戸建てや事業用物件に比べるとある程度画一化されるので、情報を収集しAIにより学習させた場合はその物件の価格がより正確にわかる可能性があります。

イエシルではマンション取引のビッグデータから、売主に参考価格の情報を与えています。このようなサービスによって、マンションごとにその価格が明確になれば、取引がより透明化しスムーズにいくのではないか期待されます。

インスぺ買取の例

インスぺ買取 https://www.insupekaitori.com/

物件状況調査(インスペクション)と買取をセットにしたプラットフォームです。これまで、インスペクションには実地での検査と報告書の作成で長い時間を要していました。インスペ買取運営のNonBrokers株式会社は、インスペクションの際にスマートフォンで写真を撮影し、報告書の作成までを簡単にできるアプリを開発し、インスペクションにかかる工数の削減を実現しました

インスペ買取は、査定申込をした物件のインスペクションを無料で実施し、買取会社の入札を受けることが可能です。売却の際に一括査定サイトで仲介を検討しても、一戸建ての場合は査定額が大きくぶれることが予想されています。買取業者に値付けをしてもらい、一番高い買取業者に直接買ってもらい、物件状況調査もセットにすることでより正確な物件情報とスムーズな取引が行えることが期待されています。

まとめ

不動産売買においてIT技術は、購入者や売却者のメリットが大きくなることが予想されているだけではなく、中古物件の流通を手軽に、かつ正確な情報をもたらすことによって活性化することが期待されています。ひいては社会問題化する空き家対策の手立てにもなる可能性を持っています。不動産の売買を検討している方は、既存の売却方法に加えてITを活用した売買のプラットフォームを活用してみることも検討されてはいかがでしょうか。

 

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