転勤になったら持ち家はどうする?売却や賃貸の選択肢、注意点を解説します

不動産売却の基礎知識
執筆者
西原 太

宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP) 
プリズム・エージェンシー株式会社 代表
不動産の売買・賃貸仲介の経験から、不動産仲介をコンサルティングサービスととらえ、お客様に寄り添いながらより満足のいく仲介・正しい情報提供を目標に日々営業中。東京都葛飾区出身
得意分野:不動産売却、資産活用、法人、医療分野

マイホームがあるのに転勤が決まったら、家をどうするべきか悩んでしまいますよね。家族の状況に加え期間、場所、会社の制度などを考えながらどのようにすればよいかを考えることと思います。この記事では、持ち家があって転勤しなければならなくなった際、どのような選択肢があるかを解説します。

転勤が決まった時の4つのパターン

転勤が決まった際に持ち家をどうするのかという事で、大きく4つのパターンがあります。

  • 売却する
  • 賃貸に出す
  • 単身赴任
  • 空き家のままにする

売却する

持ち家を売却する場合は、その理由として「もうその土地に戻ってこない」「価格面で有利」「転勤時の社宅規定が有利」「補助が手厚い」などが挙げられます。持ち家を売却するメリットは、何より売却ができればそこで一区切りとなり、賃貸に出すなどの選択肢に比べて運用の手間がかかりません

転勤時は、引っ越し後は元の家の近所にいないことも多いでしょうから、転勤が決まってから引っ越しまでの短時間で査定・取引をする不動産会社の選定までを行う必要があります

不動産会社の選び方

転勤時であっても不動産業者の選び方は大きく変わりませんが、転勤の際は、勤務先の紹介・提携がある可能性があります。

ポスティング等がある不動産業者

マンションを中心に、定期的に売却を促す広告が入ってくると思います。マンションを作ったデベロッパーの流通会社によるものや、地元に近い会社・支店が販売を行うケースもあり、直接問い合わせて不動産会社を選びます。

ポスティングを行っているような不動産業者は少なくとも売りたい物件に興味があるケースが多く、話がまとまりやすいため、早く・高く売却したい場合にはこうした会社に依頼するのも良いでしょう。

一括査定サイト

売却を検討する方は多少なりとも情報をWEB上で収集することと思いますが、その際に一括査定サイトに誘導するページやバナー広告を多く目にすることとなります。査定依頼を出すと数々の営業会社から連絡を受けることとなりますが、自ら問い合わせをするのが面倒な方は良い方法の一つです。

ただし、一括査定サイトから紹介を受けた不動産会社はあなたの紹介を受ける際に一定の手数料を一括査定サイトの会社に支払っています。その結果「相場よりも高い査定額を提示して、まずは媒介契約を結んでもらう」という営業の手段を用いる不動産会社も少なからず存在するため、注意が必要です。

勤務先の紹介

社内での辞令による転勤の場合には、イントラ上や従業員向けの福利厚生サイトなどで仲介会社の紹介があることがあります。また転勤を管理する人事総務部門に紹介ルートがある場合もありますので、その転勤が勤務先のフォローを受けられそうな場合は調べてみることをお勧めします。勤務先の紹介の場合は手数料で多少のメリットがあったり、単なる反響のお客ではなく紹介客となりますので、安心感の面ではお勧めです。

いずれの場合も不動産会社の信用もさることながら、引っ越し後は遠方からの手続きになりますので信用できる担当者を探す、という観点で選ぶことをおすすめします。

売却活動

依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約を結び、不動産会社は販売活動に入ります。

媒介契約には主に一社だけに依頼をする専任媒介契約(専属専任を含む)と複数社に依頼をする一般媒介契約の2種類があります。

転勤の際の売却活動で意識しなければならない点として、

  • 引っ越しまでに時間がない
  • 引っ越し後に遠くに行く

というものが挙げられます。

「引っ越し前に入居中内覧を実施」→(引越すまでに決まらなければ)「引っ越し後に空室を内覧」

という営業活動になりますので、引っ越し後に遠方からでも安心して任せられる不動産業者であることが大切です

入居中内覧では、生活中ではあるもののお客様をお迎えするという気持ちをもってご覧いただくのが良いでしょう。内覧時の印象で購入する側は気持ちが大きく左右されるので、家の中を片づけるなど最低限のことはやっておくべきです。

退去のあとの空室時の内覧は、不動産業者に鍵を預けたり、防犯のため、周囲の人には空き家であることがわからないように手配するケースもあります。

実際は、現地に鍵があったほうが不動産業者の営業マンのフットワークが良くなり販売にかなり有利です。ただし、セキュリティの問題もありますので内覧の際にどのようにするのかは確認をしておいたほうが良いでしょう。こうした点からも、信頼できる不動産業者、担当者に依頼することが重要になります。

住宅ローンの金融機関への相談

売却の際に住宅ローンが残っている方も多いと思いますが、売却する意思がはっきりしたら、今借り入れをしている金融機関に相談をしてください。売却の際には完済が必須条件となるので、売却代金を受け取ってもなお住宅ローンが多い場合は残債分を工面する必要があります。

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住宅ローン控除

住宅ローン控除を適用中の方は、引っ越しをしたら適用はなくなります。その後再度購入予定がある人は、数年置いて適用を受けることが可能になるなど、条件によって再適用が可能です。

売却後、再購入までに少し時間がある場合は再度一から適用が可能となることもありますので、条件を十分確認してください。なお、住宅ローン控除は延長が繰り返されてはいますが、購入までの期限が決められている制度なのでその点にも注意してください。

売却時の税金

売却時に利益が出た場合は譲渡所得がかかります。売却時の費用や減価償却費は、売却金額から控除することができます。住宅の売却には様々な特例があり、税金が軽減される仕組みがあります。

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賃貸に出す

持ち家は資産でもありますので、賃貸に出すことを検討される方も多いでしょう。家賃収入が入ってきますので、収支が合いそうな方や物件を持っておきたい方は選択肢に上がります。

賃貸の選択基準、メリット・デメリット

賃貸は、いずれ戻って来たい、または戻ってくる必要がある、家族で引っ越しをする、収益を上げたい場合に選択されることが多いです。また、売却して売却代金を充当してもローンが残ってしまって持ち出しとなってしまったり、物件に希少性があったり賃貸での収益性が高そうな物件の場合も検討されると思います。

賃貸に出し収益を得るという事は、個人事業者としてビジネスを始めるという事です。税金や修繕費が発生しますので、手取りが想像よりも減ってしまうことも多いです。また、借地借家法で借主が保護されていますので、借主の権利を満たす必要があります。

賃貸の場合は見積もりを取り、かかる費用については十分調査をしてください。

住宅ローンがある場合は、まず金融機関に相談

住宅ローンの条件として、居住することが定められていることが多いです。そもそも住宅ローンを残したまま契約で賃貸に出すことがNGとなっている場合や、OKでも転勤の場合に限るという場合もありますので、金融機関には必ず確認を取ることをおすすめします。場合によっては勤務先から証明とる必要があることもあります。昨今住宅ローンを事業用に転用し、ペナルティを受けている業者もいます。契約内容には十分注意をしてください。

賃貸にかかる費用

修繕

今まで住んでいた持ち家を賃貸に出す際は、室内のリフォームをする必要があります。ルームクリーニングは必須で、畳・障子も交換はほぼ必須、クロスも交換しなくてはいけないケースが多いです。

物件決定後は必要に応じ家賃の集金や借主との折衝を任せるために、家賃の数%に当たる金額を管理会社に入居者管理料として預託するケースも考えられます。住宅設備も貸主のものですので、例えばエアコンや給湯器が壊れた場合などはすぐに修理が必要となり、これらの費用も貸主の負担となります。

退去の際は、基本的に「自然損耗・経年劣化は貸主負担」ですので、次に貸しに出す際はクロス代などが再度必要になります。

税金

現在支払っている固定資産税は、そのまま発生し続けます。また、毎月の収入は不動産所得となりますので、確定申告が必要になります。収入のほかに、貸し出す際にかかった費用は経費として計上できる部分もありますので、個人事業者として税務面での知識も身につけましょう。青色申告の適用や、減価償却費用・住宅ローンの金利分は計上が可能です。

住宅ローン減税

住宅ローン減税は、実際の居住期間のみ適用されます。一方、所定の手続きをした場合は、戻ってきたときにまだ適用年数が残っていた場合は、残っていた年に適用が可能です。なお、転勤のため引っ越しをして住んでいなかった期間には適用されません。

例:適用期間10年間 5年間適用後、3年間転勤で居住せず残りの9年目、10年目に戻ってきて住んだ場合、2年間適用が可能です。

賃貸の契約形態

賃貸の貸し出し方法は、「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類に分かれます。普通借家契約は、借主が住みたいと言った場合は貸主側からは契約終了を申し出ることができない契約で、定期借家契約は期限を決めて、その期限が到来したら契約終了を伝えることができる契約です。

赴任期間が決まっている場合などは定期借家契約がおすすめです。一方で、普通借家契約の家賃相場のおよそ2~3割減になることや、大手法人契約では定期借家は認められないため、借りてもらえないケースがほとんどであるなど、借りづらい契約で入居者が見つかりにくい点がデメリットです。

契約時に必ずどちらかに決める必要があり、契約開始後には変更はできません

民泊

民泊は一時ブームになりましたが、最近は分譲マンションでは、民泊を認めないケースが多くありますので管理規約を確認してください。また施行された民泊新法によって、建物設備や貸出す側の届け出が必要になっています。もし希望される場合は、まずは法令や規約から民泊として利用可能かどうかを確認する必要があり、実施には相当なハードルがあります。

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単身赴任

日本は転勤が多くそのため単身赴任が多い国だといわれますが、お子様の年齢や住宅の状況を考えたときになかなか家族で引っ越せないという事も多くあるようです。実際、単身赴任の理由のほとんどが、「家族の生活を継続するため」「持ち家があるため」というものです。

単身赴任の場合は、家族とは別に暮らさなくてはいけないという大きなデメリットがありますが、お子様の生活環境を変化させたくないという考え方もあるので、単身赴任を選択される人が一定数います。勤務先の補助も様々ですので、確認をしてみると良いでしょう。

単身赴任のメリット・デメリット

単身赴任の場合は、新しい赴任先で賃貸住宅を見つけ、自分の荷物を運ばなければならないなど最低限の手続き・準備は必要ですが、家族はそのまま住み続けられるという大きなメリットがあります。また、住宅ローン控除をそのまま適用することが可能で、その点もメリットになります

デメリットは、週末に家族と一緒に自分の家で過ごしたいという場合、移動のための費用・時間がかかる点が挙げられます。

実務上は、ある程度お子様が大きくなった場合は単身赴任を選択される方多いように感じます。

空き家にする

「いつか帰ってくる予定」「人に住ませたくない」「家族と一緒に生活する」「親族が近くにいる」など、手放さない理由があるかと思います。

住宅ローンが残っている人は支払いが続き、住宅ローン控除のメリットがなくなりますので、余裕のある人やどうしても人に住まわせたくない場合に向いている方法です。居住地を転勤先に移す場合は、賃貸の場合と同様に、実際に居住していないため住宅ローンの契約の問題が発生します。金融機関によって判断が様々ですので、事前に契約内容を確認しておきましょう。

まとめ

転勤は転居を伴うので当事者の方々には負担が伴います。生活のベースとなる住宅も、今後のライフプランによって様々であり、今後その住宅をどうしたいのかによって判断が変わってきます。

売買と賃貸で比べた場合は、その時の景気で左右される面も多くあるので一概にどちらが得かは言えませんが、ご自身のライフプランを想像しながら検討するのが良いでしょう。相場の面では、売却価格と貸出価格を比べると、売却のほうが相場に左右され、貸出価格はある程度一定で、景気には左右されにくいという性質があります。

また、勤務先の補助や手当の制度などでどのような方法が有利かも変わってきます。転勤の際は勤務先の制度などを十分確認し、総合的に判断をするのが良いでしょう。

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