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不動産売却時に注意すべき告知義務と心理的瑕疵について解説

不動産の売却時に、売主が買主に伝えておくべき事はあるのでしょうか?
不動産の売却においては、売主は買主に対する瑕疵(かし=欠陥)の告知義務があるんです。これを怠ると後々トラブルになるので注意が必要です。
瑕疵の告知義務…あまりピンとこないのですが、例えば家の設備で不備がある可能性があるものなどを伝えるということでしょうか?
それは大きくまとめると「物理的瑕疵」に当たりますね。それだけでなく、快適な暮らしを阻害する要因となる「心理的瑕疵」は、人によって不快に感じる度合いが異なるため、瑕疵に該当する範囲や告知の方法がとても難しいのです。
確かにそうかもしれません。物理的瑕疵は専門家に見てもらえますが、心理的瑕疵についてはどのようにしてチェックすべきか知りたいです!
分かりました。この記事では心理的瑕疵について詳しく説明をするととももに告知義務の注意点を解説していきましょう。
このページの目次
1.
不動産の売却には告知義務がある
2.
心理的瑕疵にはどのようなものがあるのか
3.
心理的瑕疵物件で告知義務を怠るとどうなるのか
4.
心理的瑕疵物件を売却する際のポイント
5.
まとめ

不動産の売却には告知義務がある

不動産の売却においては、公平な取引をするために、売主には建物の瑕疵を買主に伝える義務があります。これが告知義務です。

買主に伝えるべき瑕疵は「物理的瑕疵」と「心理的瑕疵」の2種類に分類できます。

瑕疵があることを知りながら告知義務を怠った場合、買主から損害賠償請求や契約解除を請求される可能性があるため、売主は売却物件の瑕疵について、できる限り正確に把握しなければいけないのです。

心理的瑕疵について詳しく知るために、まず物理的瑕疵との違いを押さえておきましょう。

物理的瑕疵はインスペクションで把握する

物理的瑕疵とは、基礎にひび割れがある、シロアリの被害がある、雨漏りが発生しているといった建物の不備のことです。

建物の現況を調査するインスペクション(既存住宅状況調査)を実施すれば、専門の講習を受けた建築士によって物理的瑕疵を正確にチェックしてもらうことが可能です。

心理的瑕疵は判断が難しい

心理的瑕疵とは、自殺や殺人などが発生した過去があることによって、不動産物件が本来あるべき快適な住み心地に欠ける状態にあることをいいます。

心理的瑕疵は、売主自らが認知している事実を告知することになりますが、不快に感じる度合いが人によって異なるため、何をどこまで伝えればいいかの判断に迷うことがあります。

心理的瑕疵にはどのようなものがあるのか

実際に家を売却する際は、仲介の不動産会社と相談をしながら、どの事項を重要事項に含めるかを決めます。

では、不動産売却における心理的瑕疵にはどのようなものが該当するのでしょうか。

事故物件

建物の中で自殺や殺人事件が発生した物件は、その事実を知った後に穏やかに暮らせる買主はなかなかいません。

心理的瑕疵の中でも自殺や殺人で家の中で人が亡くなった、いわゆる「事故物件」では、不動産広告で「告知事項あり」と断り書きが出されることがあります。

一般的に「告知事項あり」と広告に出されるのは、事故物件のみですから、心理的瑕疵の中でも、最も重要な告知事項のひとつです。

一方で、嫌悪感は事故の発生した空間において著しく生じる感情なので、室外で発生したものであれば嫌悪感はやや軽減すると考えられます。

また、時間経過もある程度は考慮されます。

数十年前の自殺で嫌悪感のある人も少なからず存在しますが、その一方で事故の発生したのが相当の昔であれば嫌悪感が希薄になる人もいるため、「事故」がいつどこで発生したか確認しておきましょう。

孤独死があった

現在では、重篤な病であっても自宅で療養する人が増えてきています。

このため自宅で死を迎える人は、けっして少なくありません。

生と死は人間の自然の営みですから、そこには人に対する尊厳があってしかるべきです。

自宅で死を迎えたというだけで、その建物が心理的瑕疵になるわけではありません。

しかし、孤独死を迎えたあと長期間そこに遺体が放置されていたという事実があれば、心理的瑕疵として認識されるケースが多いです

人が亡くなった物件はどれぐらい価値が下がる?

室内で人が亡くなった物件は、相場よりもどれぐらい価格が下がってしまうのか気になる人も多いでしょう。

事件性の有無や亡くなったときの状態や時期、そもそもの立地・需要などにも左右されるので、一概にいくら下がるかを算出するのは非常に難しいところがあります。

参考までに、過去に「いえうり」で査定を実施した物件では、事件性がなく死後放置もなかったケースにおいて、査定額が下がらないケースもあれば、下がるケースもありました。

査定を実施する不動産会社や、仲介であれば購入者がどれほど気にかけるかが金額を左右すると言えるでしょう。

「いえうり」は、心理的瑕疵のある物件も買取対応している業者が多数登録しており、事故物件の買取に強い成仏不動産とも提携しています。

人が亡くなっている物件の売却で不安なことがある場合は、お気軽にご相談ください。
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使用用途による瑕疵

特に区分所有マンションを売却する際にありがちなこととして、売却前に使用していた用途が問題になることがあります。

たとえば長期間にわたり性風俗特殊営業に使用されていたり、反社会団体の事務所として使用されていたりすると、心理的瑕疵に該当することがあります。

嫌悪施設が近隣にある

「嫌悪施設」とは、住環境が損なわれ快適な住み心地が阻害される可能性のある施設のことです。

周辺環境に関することなので「環境瑕疵」として分類する考え方もありますが、施設の存在に嫌悪感を抱くという意味では「心理的瑕疵」のひとつだといえます。

しかし嫌悪施設に関しては明確な基準はなく、また人によって嫌悪する度合いがまちまちであるため、すべての買主を満足させる説明は困難です。

売却前にはできる限り周辺を調査して、負の要素があるものについては、全て説明するという姿勢で臨んだ方がいいでしょう。

施設の存在によって住み心地を損なう原因は様々です。

嫌悪感を発生させる要因ごとに分類してみましょう。

騒音や振動、臭気を発生させる施設

工場や大型の物流施設があると、建物から発生する騒音はもとより、施設に出入りする大型車両による騒音も環境を悪化させます。

その他、下水処理場、ごみ焼却場、養豚場などが含まれます。

教育上や安全上の配慮が必要な施設

ラブホテルや風俗営業店など、子ども教育に悪影響を与える施設が該当します。

またパチンコ店や暴力団事務所、刑務所などもこれに該当します。

心理的に忌避させる施設

人の死に関わることは、できるだけ避けて過ごしたいと考えている人は大勢います。

このため人の死を扱う施設は敬遠されます。

たとえば、葬儀場、火葬場、墓地などが該当します。

迷惑行為を行う人が近隣にいる

近隣に隣家に迷惑行為をする人がいる場合、これを告知しておかないと瑕疵担保責任を問われることがあります。

たとえば子どもの日常会話に対して「うるさい、静かにさせろ」と恫喝的な言動を発したり、洗濯物に水をかけたりといった、常軌を逸した行動を繰り返す人が隣近所に存在しているのであれば、重要事項で説明をしておきましょう。

この他明らかな廃棄物を敷地いっぱいに積み上げて放置している、いわゆる「ゴミ屋敷」と化しているが近隣にある場合も、説明しておいた方が売却後のトラブルを避けられます。

計画が明らかにされた空き地に隣接している

隣地が空き地の場合、何らかの形で建物の計画概要が明らかにされているのであれば、それを説明する必要があります。

特に高層ビルの計画であれば、建物の規模について伝えなくてはいけません。

心理的瑕疵物件で告知義務を怠るとどうなるのか

告知義務のある心理的瑕疵物件ですが、もしこれを怠ったままで物件を売却した場合はどのようなトラブルが想定されるのでしょうか。

改正民法によってさらにリスクは高くなる

改正された民法が2020年4月に施行されました。

これにより瑕疵物件に対する扱いは大きく変わります。

まず新民法では瑕疵という概念がなくなります。

新民法の条文で

引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。(買主の追完請求権-民法562条)

とあるように、重要事項説明を含めた契約内容と物件が一致していないと、契約不適合責任を負うことになります。

瑕疵担保の概念があった改正前の旧民法においては、目的物に瑕疵があった場合は、買主が損害を受ければ損害賠償請求ができるものの、代替物の引き渡しや代金減額は認められていませんでした。

改正民法においては、引き渡した物件の契約不適合が発見されたとき、買主は次の請求が可能です。

  1. 補修や代替物・不足分の引き渡しの請求
  2. 代金減額請求
  3. 契約解除
  4. 損害賠償請求

旧民法に比べて、新民法では買主の選択肢が広がっています。

また旧民法では、売主が瑕疵の事実を知らなかった場合は、瑕疵担保責任を問われることはありませんでしたが、新民法においては、知っていたかどうかは一切関係なく、契約書と物件の適合性のみが争点となります

このため何も告知しないまま、室内で自殺があったことが判明した場合、買主から契約破棄ばかりでなく、引越しや契約に要した費用の請求、あるいは精神的苦痛を負ったとして損害賠償を請求をされることが想定されます。

いずれにしても、最終的には裁判で争うことになりますから、売主にとっては経済的にも精神的にも大きな痛手になることは間違いありません。

瑕疵担保責任免除特約を設けた場合

不動産売買では「隠れた瑕疵には責任を負わない」という瑕疵担保責任免除特約をつけることがあります。

もしこの特約のある物件で、売却後「過去に自殺があったこと」が判明したらどうなるでしょうか。

特約が有効なのは「隠れた瑕疵」に対してです。

売主の居住していた住宅であれば、自殺があった事実を失念したり知らなかったりということは常識的にあり得ないため、隠れた瑕疵には該当しないとして売主は瑕疵担保責任を負うことになります。

また新民法においては「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」となります。

新民法施行後は、新たな形の特約が設けられることになりますが、契約との不適合が争点になることを鑑みると、特約を設けても自殺の事実を告知しなかった責任を免れるのは難しいでしょう。

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2019.07.10

心理的瑕疵物件を売却する際のポイント

心理的瑕疵物件を売却するのは、基本的には物理的瑕疵物件を売却することと変わりありません。

ただ物理的瑕疵物件は、その瑕疵について、図面化したり数値化したりすることができますが、心理的瑕疵は瑕疵の度合いを表現できない困難さがあります。

ここでは心理的瑕疵物件を売却する際には、どのような点に注意していけばいいのかを解説していきます。

不動産会社に相談する

心理的瑕疵の要因がある物件は、仲介を依頼する不動産会社に予めその事実を伝えておきましょう。

それにより瑕疵を配慮した売却額が決定されます。

また事故物件であれば、広告に「告知事項あり」として断り書きが記載されることがあります。

告知事項があることを公表した場合、買主が現れないといったことや安く買い叩かれるという事態が想定できます。

しかし告知事項を隠匿して売却し、やがて買主が知るところになると損害賠償や契約解除を申し出られるというリスクがあります。

そう考えると、正直に告知しておく方が、結果として損害を最小限にとどめることができるといえます。

事実関係はしっかりと押さえておく

自分が住んでいた家が事故物件になった場合は、当事者として事故の経緯や状況は把握しています。

しかし両親や祖父母の住んでいた家が事故物件である場合、必ずしも事故の詳細を把握しているわけではありません。

自殺や殺人があったとされる物件であれば、事故の経緯を伝聞で把握するのではなく、関係者、目撃者、警察、裁判所などから正確な資料を収集することが重要です

特に事故からの時間が経過したものについては、人々の記憶が曖昧になっているばかりか、悪戯に大きな話に変化させている可能性も否定できません。

事実関係はしっかりと押さえて、無責任な情報に惑わされないようにしましょう。

値引き額を明確にする

心理的瑕疵物件の場合、相場よりも安く売り出すことになります。

その場合、本来の物件価格と心理的瑕疵による値引き額を明確にしておく方がいいでしょう。

買主の希望に応じて、さらに値引きをすることもやむを得ないこともありますが、それで買主の嫌悪感が軽減できるのであれば、有意義な取引だといえます。

心理的瑕疵物件に強い不動産会社に仲介を依頼する

物理的瑕疵物件であれば、瑕疵の度合いが数量化できるため、一般的な不動産売買と大差はありません。

しかし心理的瑕疵物件は、買主の感情や感覚に委ねる部分が大きいことから、ある意味心理戦の取引となります。

こうした取引になると、やはり類似のケースで場数を踏んだ経験のある不動産会社の方が、「押しどころ」と「引きどころの」のツボを心得ていることから、スムーズに進めることができます。

個人的な約束を根拠に説明しない

隣地が更地の場合、将来どんな建物が建てられるのかを予測するのは困難です。

売却ぎりぎりの段階で建築計画概要書を閲覧して、何の計画もなければ、仲介する不動産会社に、都市計画規制から想定できる規模を説明してもらうことで責任は果たせます。

もし建築計画が決まっている場合は、建築計画概要書の写しを入手して買主に資料として提示します。

これにより、将来買主の想定を超える日影が生じたとしても、心理的瑕疵には該当しません。

建築基準法に定められた範囲で生じる日影は受忍限度として広く認識されているため、過度の心配は不要です。

ただし過去の判例で、園芸を目的に購入した住宅の裏に4階建てのビルが建ったために園芸ができなくなったとして売主が訴えられ、敗訴したというものがあります1

これは売主が隣家と「互いに木造2階建て規模の住宅しか建てないことを約束した」ことを根拠に、売却の際に庭の日当たりを保証したためです。

しかし個人的な口約束には何の拘束力もありません。

ましてや、このケースでは第三者が隣地を購入してビルを建てたために、そもそも個人間の約束とは無関係な立場だったのです。

したがって売却に際しては、個人的な約束を根拠に隣地の建物の規模を説明することは避け、都市計画規制上建つ可能性のある規模を示すことが基本だといえます。

商業地域や工業地域では日影よりも眺望に注意

商業地域においては、遊戯施設、風俗営業店、酒類を提供する飲食店の建築は認められています。

また工業地域では、大規模な工場の建築が認められています。

これらの地域は住環境よりも産業の発展を目指す地域ですから、嫌悪施設はかなり限定的なものに絞られると考えるのが一般的です。

また商業地域と工業地域では日影の規制もないことから、売却後に高層ビルが建築されたことにより、敷地に日影が及んでも、心理的瑕疵を理由に損害賠償請求をされる確率はかなり低いといえます。

ただし眺望をウリにしてマンションを売却するのであれば、眺望を妨げる計画が売却段階でないことを確認しておく必要があります。

リフォームをする

事故物件においては、たとえ自殺や殺人とは無関係な汚れであったしとても、買主は嫌疑の目で認識します。

事故の発生した部屋については、フローリングや壁クロスをリフォームすることで、買主の嫌悪感が緩むことがあります。

更地にして売り出す

凄惨な事件や社会を騒がせた現場だと、多少のリフォームをしても効果が期待できないことがあります。

そのような事態が想定できる場合は、思い切って建物を解体して更地として売り出すという方法が有効です。

買取専門業者に売却する

買取専門業者は、物理的瑕疵物件や心理的瑕疵物件などの訳あり物件を買い取って、新たな買主を探すノウハウを有しています。

市場の相場価格よりも多少割安になる可能性はありますが、まったく売却できない事態も想定できるのであれば、売却できるメリットは大きいといえます。

まとめ

不動産の売却に際しては、今後は契約と物件の適合性が問われることになりますから、瑕疵については極力明らかにしておきましょう。

特に事故物件に関しては、たとえ大昔の事故であったとしても、やがて買主の耳に噂話として面白おかしく伝わる可能性は十分にあります。

売却を急ぐあまり告知義務を怠ると、後に契約解除や損害賠償などを求められる可能性がありますので、長い目で見ると、きちんと瑕疵を告知した方がリスクを回避できると言えます。

不動産の売却に際しては、瑕疵をきちんと告知することを心がけましょう。

1.
大阪地判昭和61年12月12日(判タ 668号 178頁)

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