住宅ローン残債が売却額で完済できない場合は買い替えできない?対処法を解説します

不動産売却の基礎知識
執筆者
逆瀬川勇造

明治学院大学卒。地方銀行勤務後、転職した住宅会社では営業部長としてお客様の住宅新築や土地仕入れ、広告運用など幅広く従事しました。2018年よりP.D.Pを設立。WEBを通して不動産に関する問題解決を目指します。
保有資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)、住宅ローンアドバイザー、相続管理士

家を買い換えようとしたとき、住宅ローンの残債を完済できないとそもそも家を売却できないことをご存知でしょうか。この場合、手持ち資金を用意できれば問題ないのですが、すぐに用意できないことも多いでしょう。

本記事では、住宅ローン残債が売却額で完済できないと買い換えできない理由を解説するとともに、その対処法について解説していきます。

住宅ローン残債が完済できないと買い換えできない?

住宅ローンを組んで購入した家を売却して買換えようとするときは、住宅ローンの残債に気をつける必要があります。

家を売却して得た売却代金で住宅ローンの残債を完済できなければ、そもそも家を売却できないからです。

抵当権について解説

住宅ローンを組むと、購入する家に抵当権を設定する必要があります。

抵当権とは、対象となる住宅ローンの返済が滞った場合には、融資した金融機関が家を差し押さえることのできる権利です。この抵当権がついている家は原則として売却できません。

このため、家を売却する前に抵当権を抹消する必要があるのですが、抵当権を抹消するためには住宅ローンを完済することが条件となります。

つまり、家を買い換えするときには家の売却代金や手持ち資金を足し合わせて、住宅ローンの残債以上の額にしなければならないのです。

新築住宅は購入した瞬間価値が2割下がる?

日本では新築住宅に対する人気が高く、「新築住宅は購入した瞬間価値が2割下がる」と言われているほどです。

これは、買主側が新築=誰も住んだことのない家に価値を感じやすいことと、売主側が建物の建築費以外に広告費や売主側の利益を価格にのせることで価格が高くなってしまいやすいことが理由として挙げられます。

国土交通省の「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」では新築から築35年までの価格推移が記載されています。これによると、マンションは築0年から築1年で1割強価格が下がった後、緩やかに下がっていく一方、戸建て住宅(木造)では築0年から築1年で5%程度しか下がらないものの、その後20年程かけて急激に価値が低下し、築15年程で8割程価値が下がっていることが分かります1

特に木造の新築戸建て住宅を建てた場合、築15年を超える家を売却しようと考えると、建物部分の価値はほとんどなく、住宅ローンの残債より売却価格が安くなってしまいやすいといえます。

住宅ローンで元利均等返済を選ぶと当初の残債の減りが遅い

ローンの返済には「元利均等返済」と「元金均等返済」があります。

元利均等返済とは、「借入期間中、元金と利息の合計額を均等に返済していくこと」で、元金均等返済は「借入期間中、元金を均等に返済していくこと」です。

出所:住宅金融支援機構「元金均等返済と元利均等返済の違いは何ですか。」

住宅ローンにおいては、毎月の返済額が均等になる元利均等返済が選ばれることが多いです。元利均等返済には「当初数年~十数年の残債の減りが遅い」という特徴があります。

例えば、借入額3,000万円、借入期間35年、借入金利1%で借入した場合、10年返済時点の残債はおよそ2,250万円、20年返済時点の残債はおよそ1,400万円となっています。

毎月返済額はおよそ8.4万円なので、10年経過時点の総返済額は1,008万円、20年経過時点の総返済額はおよそ2,016万円となり、実際の返済額と残債とでは、10年返済時点でおよそ250万円、20年返済時点でおよそ416万円の乖離があることが分かります。

経過年数(年)毎月返済額(円/月)内利息分(円/月)残債(円)
184,68524,45029,280,480
284,68523,84528,553,734
384,68523,23427,819,687
484,68522,61627,078,265
584,68521,99326,329,393
684,68521,36325,573,001
784,68520,72724,809,011
884,68520,08424,037,345
984,68519,43523,257,928
1084,68518,78022,470,680
1184,68518,11821,675,523
1284,68517,44920,872,377
1384,68516,77420,061,164
1484,68516,09119,241,801
1584,68515,40218,414,206
1684,68514,70617,578,297
1784,68514,00316,733,991
1884,68513,29315,881,203
1984,68512,57615,019,848
2084,68511,85214,149,840

※借入期間35年、借入金利1%、借入額3,000万円で計算

特に元利均等返済を選ばれた方は、住宅ローンの残債を調べたときに「思ったより減っていないな」と感じることが多いでしょう。

住宅ローンの残債があるときの買い換え

ここからは、住宅ローンの残債があるときの買い換えについて詳しく見ていきたいと思います。

なお、「家の売却額」が「住宅ローンの残債」より大きい状態のことを「アンダーローン」「家の売却額」が「住宅ローンの残債」より少ない状態のことを「オーバーローン」と呼びますが、まずはこれらについて解説します。

アンダーローンの場合

アンダーローンは家の売却額が住宅ローンの残債より大きい状態のことなので、家を売却したお金で住宅ローンの残債を完済してしまえば問題ありません。

住宅ローンの残債を完済して残ったお金については買い替え先の家を購入するお金に充てることもできます。

例えば、住宅ローンの残債が1,500万円で家の売却代金が2,000万円であれば、家の売却代金で住宅ローンを完済できるので問題なく買換えに進めるのに加え、差額の500万円を買い換え資金等に充てられます。

オーバーローンの場合

一方、家の売却代金より住宅ローンの残債の方が大きいオーバーローンの場合、対策を講じなければ家を売却することはできません。

売却額と手持ち資金で完済できる場合

まず、オーバーローンでも手持ち資金で住宅ローンを完済できるのであれば問題ありません。

例えば、住宅ローンの残債が1,500万円、家の売却代金が1,000万円だった場合、差額の500万円を手持ち資金で用意できれば問題なく買い換えに進むことができます。

手持ち資金が足りない場合

一方、オーバーローンの状態にあり、さらに差額分を手持ち資金で用意できない場合には家を売却できず、買い替えに進めることができません。

この場合、対処法として「任意売却する」か「買い換えローンを利用する」かの2つの方法を取ることが考えられます。

以下でそれぞれについて見ていきましょう。

オーバーローンの場合の対処法その1:任意売却する

任意売却とは、住宅ローンを完済できていなくても抵当権を抹消できるよう、金融機関と交渉する方法です。

例えば、住宅ローンの残債1,500万円に対して1,000万円しか用意できなくても、金融期間と合意のうえ任意売却すれば家を売却できます。

なお、残った500万円については金融機関と返済条件を交渉し、返済していくことになります。

とはいえ、実は任意売却は「住宅ローンを延滞した後」にしかすることができません。

住宅ローンを延滞してしまえば個人信用情報に傷がついてしまうため、新規でローンを借りることができなくなります。

このことから、買い替えの際に任意売却を選ぶこと現実的ではありません。

オーバーローンの場合の対処法その2:買い替えローンを利用する

オーバーローンの場合で手持ち資金も用意できない場合、現実的には買い替えローンを利用するのが一番の方法です。

買い換えローンとは、買い替え先の家の購入にあたり、家の購入価格以上の融資を受けることで、住宅ローンの残債も完済してしまうというものです。

例えば、3,000万円の家を購入するにあたり、3,500万円の融資を受けることで差額の500万円を、住宅ローンの残債の完済に充てることができます。

ただし、買い換えローンは、家の担保価値以上の融資を受けることから、通常の住宅ローンに比べて審査が厳しくなることに注意が必要です。

住宅ローンの残債があるときの買い換えに関する注意点

住宅ローンの残債があるときの買い換えにおいては以下の点に注意する必要があります。

  • 家の売却代金は最後まで変動する可能性がある
  • 家の売却にも買い換えにも諸経費がかかる

家の売却代金は最後まで変動する可能性がある

家を売却する際、最初に不動産会社の査定を受けて売却価格を算出してもらいます。

通常、買い替えの資金計画はこのときの査定価格を元に立てますが、実際に家の売却活動を始めて買い手がつかないと値下げを検討しなければなりません。

また、いざ買い手の候補者が見つかったとしても、最後に「この価格であれば購入します」と価格交渉を持ち掛けてくることもあります。

住宅ローンの残債がある家を売却して買い換えするときは、この最終的な売買価格で住宅ローンを完済できるかを判断する必要があるのです。

例えば、住宅ローンの残債が1,500万円で、1,600万円で売りに出したところ売却が決まらず、1,500万円に値下げした後、買い手が現れたので話を進めようとしたところ、最終的に1,400万円までの値下げを要求された場合、差額の100万円を用意できない場合には断わらざるを得ないということになります。

家の売却にも買い換えにも諸経費がかかる

ここまで、諸経費については考慮せずに計算してきましたが、実際には家の売却にも、買い換えにもそれぞれ仲介手数料や登記費用などの諸経費がかかります。

具体的な諸経費の額は売買する家の価格にもよりますが、売却と買い換えそれぞれについて売買価格の5~10%程度はかかると考えておいたほうがよいでしょう。

仮に1,500万円の家を売却して3,000万円の家に買い換える場合、家の売却と買い換えで合計200~300万円程度の諸経費がかかると考えた上で買い換えの資金計画を立てる必要があります。

オーバーローンの場合の対処法番外編:インスぺ買取を利用する

オーバーローンの場合の対処法として、任意売却する方法と買い換えローンを利用する方法をお伝えしましたが、インスぺ買取を利用することで対処できる場合もあります。

インスぺ買取とは、売却する家についてインスペクション(第三者による住宅診断)を受けた物件を登録し、その物件を見た不動産会社から入札形式で買付申込を受け取るというものです。

インスペクションを受けていることから、不動産会社は高値での買い付け希望を出しやすいのに加え、入札形式のため、売主としては複数の買付申込の中からより条件のよい不動産会社を選ぶことができます。

これにより、通常の仲介による売却と比べて「最終的に売却価格がいくらになるか分からない」という心配をする必要がありません。

また、仲介業者を利用しないため仲介手数料がかからないのに加え、仲介による売却であれば、一般の方向けに壁紙やフローリングをリフォームしなければならないこともある一方、インスぺ買取は買主が購入後にリフォームを実施するため、そうした費用も不要です。

インスぺ買取と仲介による売却を比較

インスぺ買取は不動産会社による直接買取と同じく、不動産会社側の利益を見込む必要があるため、仲介による売却と比べて売却価格が安くなってしまう可能性があります。しかし、これを考慮してもトータルで売却価格を高くできる可能性があります。

例えば、住宅ローンの残債が1,500万円で、仲介による売却で1,600万円、インスぺ買取で1,400万円の査定額がついたケースを想定してみましょう。

まず、仲介による売却では1,500万円など最終的に値下げされる可能性があります。一方、インスぺ買取ではこちらも1,500万円などよりよい条件を提示しれくれる可能性があります。

また、仲介による売却では仲介手数料やリフォーム費用を負担する必要があります。

仲介手数料は「売買価格×3%+6万円+消費税」が上限となっており、ここでは上限額となる1,500万円×3%+6万円+消費税=57.1万円かかったとします。

加えて、リフォーム費用としてフローリングや壁紙の張替えを行い、30万円程度の費用を想定します。

ここまでを合計すると、仲介による売却では差額として現金90万円程度を用意する必要があるのに対し、インスぺ買取では手出しなしで買い換えできることになります。

このように、仲介による買い取りではなく、インスぺ買取を選ぶことでオーバーローンの場合の対処法とできることもあるため、住宅ローンの残債がある状態で買い換えを検討している場合は、インスぺ買取への物件登録を検討してみるとよいでしょう。

なお、インスぺ買取を利用できるのは現在戸建て住宅のみとなっている点に注意が必要です。

まとめ

住宅ローンの残債があるときの買い換えについて解説しました。

オーバーローンの状態にあり、かつ手持ち資金で対処できない時には買い換えローンの利用を検討する必要があります。とはいえ、買い換えローンは家の担保価値以上の融資を受けるため審査が厳しくなってしまいます。

オーバーローンで手持ち資金を用意できず、買い換えローンの審査で承認を得ることがてきない場合には、買い換え自体できません。

ただし、オーバーローンかアンダーローンかは家の売却次第です。

インスぺ買取を利用するなどして、家の売却価格を高くすることができれば、上記のような状態でも解決できることもあります。そうでなくとも、家をできるだけ高く売却したいとは誰しも思っているでしょう。

住宅ローンの残債のある家の買い換えを検討する際には、まずはインスぺ買取の利用を検討してみるとよいでしょう。

  1. 参考:国土交通省「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」
タイトルとURLをコピーしました