借地権は売却できます。所有物件の売買との違い・手順などを解説

不動産売却の基礎知識
執筆者
逆瀬川勇造

明治学院大学卒。地方銀行勤務後、転職した住宅会社では営業部長としてお客様の住宅新築や土地仕入れ、広告運用など幅広く従事しました。2018年よりP.D.Pを設立。WEBを通して不動産に関する問題解決を目指します。
保有資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)、住宅ローンアドバイザー、相続管理士

借地権を相続した場合や建物を借りる際に土地を借りたものの、何らかの理由で手放す必要が生じたとき、借地権を所有権のように売却することは可能です。

本記事では、借地権の売却について所有物件を売買する場合との違いや、具体的な借地権売却の手順など解説していきます。

借地権とは?

最初に、そもそも借地権とはどのようなものなのか見ていきたいと思います。

地上権と賃借権

借地権には地上権と賃借権の2つがあります。

双方とも、建物の所有を目的として土地を借りることに違いはありませんが、地上権は物件、賃借権は債権といった違いがある他、地上権は地主の承諾がなくとも譲渡・転貸できるなどの違いがあるなど、基本的に地上権の方が強い権利となっています。

このことから、実際には地上権はほとんど採用されておらず、賃借権を設定するのが一般的です

なお、借地権は平成4年8月に新法が施行され、それ以前の借地契約は旧法(借地法)の適用を受け、それ以降の借地契約は新法(借地借家法)の適用を受けます。

旧法(借地法)における借地権

平成4年8月以前の借地契約は旧法(借地法)の適用を受けます。

旧法は、借主の権利が強すぎるという問題があります。

具体的には、借地契約の終了時に、借主は契約期間終了時に契約を更新するかしないかを選択しますが、このとき、貸主の側から更新を拒否するには「正当事由」がないといけないこととされています。

このことにより、「土地を一度貸したらずっと返ってこない」といった状況になることも多く、借地契約が敬遠される事態となってしまいました。

新法(借地借家法)における借地権

そうした中、登場したのが新法(借地借家法)です。

借地借家法では、旧法と同じような性質を持つ普通借地権の他、「当初設定した借入期間終了時には借主の元に土地が返還される」定期借地権の制度が用意されるようになりました。

定期借地権には「一般定期借地権」と「事業用定期借地権」、「建物譲渡特約付き定期借地権」があります。

一般定期借地権の借入期間は50年以上で設定する必要があります。例えば、当初50年で借入期間を設定したら、50年経過時点で借主は土地を更地にして貸主に土地を返還しなければいけません(引き続き借りたい場合は、新たに契約を結ぶ必要がある)。

これにより、貸主は安心して土地を貸せるようになりました。

借地権を第三者へ売却できる?

普通借地権にせよ、定期借地権にせよ、借地権は数十年単位で設定するのが一般的です。

しかし、借地する段階では、数十年後の事情は分かりませんよね。

または、親御さんから借地権を相続するようなこともあるかもしれません。

こうしたとき、借地権を売却して現金を手にすることはできるのでしょうか?

借地期間中に第三者への売却は可能

まず、借地期間中に借地権は第三者へ売却することは可能です。

地主はそのままに、土地の借地権と土地の上に建てられた建物を第三者に売却する形となります。

地主の承諾を得る必要がある

しかし、借地権はいつでも自由に売却できるというわけではありません。

借地権は、地主から土地を借りる権利ですから、その借地権を第三者に売却するには、地主の承諾を得る必要があります。

なお、法律で決められているわけではありませんが、借地権を売却するときは、地主に対して譲渡承諾料を支払うのが慣習となっています。

譲渡承諾料は名義書書換料とも呼ばれ、「借地権価格に10%をかけた額」を支払うのが一般的です。

とはいえ、譲渡承諾料は地主が納得すればいくらでもよく、8%程度で成約することもあります。

一方、逆に言えば地主が納得しなければ借地権を売却することはできず、場合によっては25%など高額な承諾料が必要となることもあります。

借地権を地主に買い取って貰う方法もある

借地権は、地主の承諾を得ることができれば所有権と同じように売却することは可能です。

とはいえ、借地権は所有権より売却しづらいのが一般的です。

例えば、当初30年と設定した定期借地権を15年経過時点で売却しようとした場合、新借地権者は残り15年経過した時点で建物を解体して土地を返還しなければなりません。

こうしたことから、一般的に借地権は売却しづらいのです。

このため、借地権を地主に返還するのも一つの方法です。

底地健と借地権をセットで売却する

土地には底地権と借地権があります。

地主が土地を第三者に貸しているケースでは、土地の借主が借地権を保有し、地主が底地権を保有しているという状態です。

土地の価格については、コーヒーカップ・ソーサー理論という考え方がよく引き合いに出されます。

コーヒーカップとソーサー(コーヒーカップの下の皿)はセットで販売されているのが理想で、それぞれ単独だと価格が安くなってしまうというものです。

コーヒーカップとソーサーがセットの状態だと1,000円で売却できるのに、単独だとコーヒーカップが500円、ソーサーが300円程度でしか売却できない状態を思い浮かべるとよいでしょう。

土地の借地権と底地健もコーヒーカップとソーサーの関係と同じ状態だといえます。

つまり、借地権と底地健を単独で売却するより、借地権と底地権を足し合わせて売却した方が高額で売却できるというものです。

借地権の売却時、地主から了承を得られれば、借地権だけでなく地主が保有する底地権を売却することもできます。

もちろん、土地の賃借人が保有するのは借地権だけですが、単独で売却するより高値で売却しやすくなります。

借地権の売却時にはこうした方法もあることを知っておくとよいでしょう。

所有物件と借地権売却の違い

借地権を第三者に売却できることは確認しましたが、所有物件を売却するのとどのように違うのでしょうか?

すでに取り挙げたことも含めて、所有物件の売却と借地権の売却の違いを見ていきたいと思います。

借地権は地主の承諾を得る必要がある

まず、先述の通り、借地権の売却は地主の承諾を得る必要があります。

所有権の売却では、もちろん第三者の承諾を得る必要はありません。

この点は大きな違いだといえます。

借地権は一般的に売却しづらい

これも先ほど解説した通りですが、借地権は所有権と比べて売却しづらくなっています。

所有権の売買は一般的に行われており、エリアごとに相場が形成されていますが、借地権の売買は活発に取引されているとは言いづらく、購入を考える方は少ないのが実情です。

なお、同じ借地権でも、定期借地権は期限がくれば原則として土地を地主に返還する必要がある分、普通借地権より売却しづらくなっています。

一般的な不動産会社では借地権売却のノウハウがないことがある

一般的な不動産会社では、所有権の売買は活発に取引していても、借地権の売買は実績が少ないことが珍しくありません。

そうした不動産会社に借地権の売却を相談しにいっても、効果的に売却活動を行うことはできません。

借地権の実績が豊富にある不動産会社が近くにあればそれでよいですが、借地権の売却を専門に行っている業者もあるため、探してみるとよいでしょう。

買主が所有権ではなく借地権を購入するメリット・デメリット

所有権にせよ、借地権にせよ、不動産を売却するときは、購入する人を想定して価格などの条件を設定すると話がまとまりやすくなります。

ここでは、買主が所有権ではなく借地権を購入するメリット・デメリットをみてみたいと思います。

メリット1・固定資産税や都市計画税がかからない

固定資産税や都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者に対して課されます。

土地を借りた人は、例え実質的に土地を利用していたとしても、固定資産税や都市計画税が課されるのは土地の所有者です。

つまり、土地を購入して所有権を得ると固定資産税や都市計画税を支払う必要がありますが、借地であればそれらの費用は地主が負担することになります。

メリット2・所有権より安価で購入できる

土地の所有権を購入する場合、購入時にまとまった資金が必要となりますが、借地権の購入では、当初必要な資金を少なくすることができます。

借地権の売却価格は「借地権価格の3分の1~3分の2程度」が相場だと言われています。

例えば、相続税路線価で計算した評価額が1,000万円、借地権割合が70%の土地であれば、借地権価格は700万円となります。

この借地権価格の3分の1~3分の2ですので、210万円~420万円程度が相となります。

もちろん、実際にはこれより高い価格で売却できることもあれば、これより安くでも売却できないこともありますが、所有権を購入するのと比べたらかなり安価で購入できることが分かります。

メリット3・借地とはいえ希望すれば半永久的に利用できる

普通借地権の場合、当初借入期間経過後に、借主から要望があれば更新することができます。

この更新を地主が拒絶するには「正当事由」が必要となります。

このように、借地とはいえ、希望すれば土地を半永久的に利用できるため、所有権を保有しているのとそう変わらないとも言えるでしょう。

デメリット1・担保評価が低く融資の審査が厳しい

借地権とその上に建てられた建物を購入する際には、住宅ローンを利用する方が多いでしょう。

所有権の売買においては、住宅ローンは購入する物件を担保に高額の融資を受けやすくなっていますが、借地権の場合、所有権程担保価値がなく、ローンの審査が厳しくなってしまいます。

デメリット2・地代が発生する

借地権の購入では、当初の購入価格を安くすることができますが、毎年地代が発生します。

なお、地代の相場は固定資産税や都市計画時税の3倍程度を目安に設定されるのが一般的です。

デメリット3・リフォームするだけでも地主の許可が要る

借地権を売却するには地主の承諾が必要なことをお伝えしましたが、借地権購入後は、建物を建て替えするときに地主の承諾が必要なのはもちろん、リフォームするだけでも承諾が必要となります。

所有権を保有しているのと比べて自由度が低くなってしまいます。

借地権売却の流れ

ここでは、借地権売却の流れを見ていきたいと思います。

地主の承諾を得るための交渉をする

借地権の売却においては、地主の承諾が得られなければ話は始まりません。

まず、借地権の売却について承諾を得る必要があります。

また、借地権を売却した後、新借地権者が建物を建て替えることを条件に借地権の購入を希望している場合、事前に建替え承諾を得なくてはなりません。

その他、購入者が住宅ローンを組む場合には地主が必要となるため、その承諾が得られるかを確認したり、現借地権者の地代や更新料の清算についても話し合ったりしておくとよいでしょう。

借地権の売却を進める

地主の承諾が得られたら借地権の売却を進めます。

不動産会社や専門業者に依頼し、広告や案内をしてもらいますが、この辺りは所有権の売却とほとんど同じ流れとなります。

買主が見つかったら地主と新借地人との間で契約する条件を確認する

売却活動の結果、借地権の買主が見つかったら現借地人と新借地人との間で借地権の売買契約を結ぶとともに、地主と新借地人との間で締結する借地契約の条件を確認します。

借地権売却~引き渡し

全て話がまとまり、買主からお金を受け取ったら引渡しとなります。

地主が売却を承諾してくれないときは?

借地権を売却するには地主の承諾を得る必要がありますが、承諾を得られないときはどうすればよいのでしょうか?

こうしたケースでは、裁判所で手続きすることで地主の承諾の代わりとなる許可を得ることができます。

どうしでも地主の承諾が得られないときは裁判所で許可を得る手続きを検討してみるとよいでしょう。

ただし、借地権を売却するにあたり、「地主の承諾が得られずに裁判所の許可を得て売却している」借地権は、「地主との関係の悪い借地権」と見られ、敬遠されやすくなります。

可能な限り、地主との関係は良好なままの売却を目指すようにしましょう。

まとめ

借地権の売却についてお伝えしました。

地主の許可を得ることで、借地権を第三者に売却することは可能ですが、一般的な売却と比べて売却しづらいのが実情です。

不動産会社も借地権の売却には慣れていないことも珍しくないため、専門の業者を利用できないか探してみるとよいでしょう。

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