実家が空き家になったときにやるべきこと|相続手続きと管理方法について

実家が空き家になったときにやるべきこと|相続手続きと管理方法について不動産売却手続き
執筆者
切塗よしを

きりぬりよしを:ライター、小説家/政令指定市の行政マンとして都市計画法関連業務に従事、建築主事、建築専門学校非常勤講師の経験を有する/大阪文学学校賞、滋賀文学祭小説部門特選/ことの葉行政書士事務所代表
【保有資格】特定行政書士、既存住宅状況調査技術者(インスペクター)、建築基準適合判定資格者、終活カウンセラー、著作権相談員

近年、放置されたままの空き家が社会問題化しています。住む人のいない住宅は、徐々に朽ちていき、第三者を巻き込む事故に発展することもあるのです。空き家となった実家を健全な状態で維持するには、どのような対策を講じればいいのでしょうか。空き家の相続手続きと管理方法について、詳しく探っていきましょう。

実家を空き家のままで放置した場合のデメリット

空き家となった実家を相続しても、物件が遠方にあると、なかなか足を運ぶことができません。しかし、もしそのまま放置をしていたら、大きな問題に発展する可能性があります。まず空き家を放置した場合のデメリットからみていきましょう。

建物の劣化が進行する

建物は、小さな損傷を見過ごしていると、徐々に傷口を広げていき、やがて劣化が著しく加速します。

たとえば、台風の際に屋根瓦が飛散したり、悪戯による投石でガラスが割れたりすることがあります。この時点でただちに対処をすれば、容易に原状回復ができますが、空き家だと、こうした事象の発見がどうしても遅れてしまいます。気がついたときには、さらに破損が進行して、どこから手を付けていいのか分からないといった状況になることも十分にあり得るのです。

また、室内も定期的に新鮮な空気をいれておかないと、カビや湿気によって、劣化が進行します。

このように相続した家を空き家の状態で長期間放置していると、建物の内外から劣化が進行していき、やがていつ崩壊してもおかしくない廃墟と化すのです。

敷地に雑草が生い茂る

相続した実家が庭付きの一戸建てだった場合、空き家のままで放置しておくと、庭に雑草が生い茂ることになります。

庭を無秩序な状態で放置しておくと、見た目が悪いばかりでなく、野良犬や野良猫、あるいはその他の害獣やスズメバチなどの害虫の繁殖地になることもあります。

周辺の人々の脅威となることがある

大きく成長した樹木が、隣家の屋根を覆うようになるまで成長すると、いつ樹木が倒れてくるか分からないために、隣人の日常を不安に晒すことになります。あるいは大量の枯葉が、隣家の屋根や庭に堆積することもあります。

枝くらい勝手に切ればいいと考えがちですが、たとえ自己敷地の頭上であっても、民法の規定によって、他人の樹木を勝手に伐採することはできないのです。このため隣家の人が不安を解消するためには、わざわざ樹木の所有者を調べたうえで、伐採の依頼をするという大きな手間をかけないといけないのです。

また空き家は、心無い人による放火や不審者が住み着くといったリスクを抱えています。さらには不法に投棄されたごみの悪臭が周囲に漂ったり、シロアリなどの害虫を大量発生させたりすることがあるため、所有者の意思とは関わりなく、周辺の人々に迷惑をかけてしまうことになります。

加害責任を問われることがある

台風が近づくと、自宅周辺をチェックして飛散しそうなものに対策を講じることがあります。しかし相続した空き家だとそこまで目が行き届きません。そのため、台風の影響で建物の一部が飛散したり、塀や樹木が倒れたりしたことによって、人体や器物に被害を及ぼすことがあります。

こうした空き家が原因となった事故については、すべて相続した人が責任を負うことになるため注意が必要です。

過料(罰金)が課せられることがある

空き家対策措置法1が施行されたことにより「放置したままだと悪影響がある」と地方自治体が認定した空き家は「特定空家」に指定されることになりました。

特定空家に指定されると、所有者に対して改善命令が出されることもあり、これを無視すると50万円以下の過料が課せられます。さらに撤去命令を無視し続けると、やがて行政代執行が実施されて、それに要した費用を請求されることになります。

固定資産税を払い続けることになる

空き家を相続すると、たとえ自分が住んでいなくても、固定資産税が課せられます。自宅以外の固定資産税を納めることは、経済的にも精神的にも大きな負担になります。

しかも、特定空家に指定されると、固定資産税はさらに税額が増します。現在の固定資産税の制度は、敷地内に建物があれば、200平方メートルまでの敷地部分に対しては、固定資産税を6分の1に軽減する軽減措置が実施されています。ところが特定空家に指定されてしまうと、この軽減措置が適用されません。

第三者に管理を委託することになる

空き家を一切管理しないままで放置をしておくと、さまざまな弊害があることが分かりました。つまり当分売却する予定がないのであれば、こうした事態を防ぐために定期的な点検や管理は欠かせないということになります。

しかし、相続した空き家が自宅から遠く離れた地にある場合、定期的な管理は困難です。そのため、親戚や知人、あるいは空き家を管理する専門会社などに委ねることが避けられない状況になります。

こうした第三者に管理を委ねざるを得ない点も、空き家を放置した場合のデメリットだといえます。

空き家になった実家を相続するために必要な手続き

実家にひとりで住んでいた親が亡くなると、残された空き家は子どもの世代が相続をすることになります。空き家を相続するためには、どのような手続きが必要なのかみていきましょう。

相続人を確認する

亡くなった親の戸籍謄本によって相続人を確認します。例外はありますが、一般的には親の名義で登記されていれば、配偶者および兄弟姉妹の範囲で相続人が確定します。

しかし、古くから建っている住宅によくあるのは、代替わりをしても登記名義をそのままにしているケースです。特に相続税の対象にならない規模の住宅であれば、登記をそのまま放置していることが多いです。登記の名義が、何十年も前に亡くなった祖父母のままだと、相続人は親の兄弟やその子供、さらに孫まで対象になることすらあります。

相続人の数が増えるほど、総意をまとめることが困難になるため、空き家の管理が宙に浮いてしまう確率が高くなります。こうした事態を避けるためにも、親が存命中に土地建物の不動産登記を最新のものに変更しておくことが重要なのです。

遺言書の確認

相続の配分については、被相続人との続柄によって割合が定められていますが、遺言書があれば、そこに記載されている内容が優先されます。そのため、空き家の相続についても、まず遺言書の有無を調査する必要があります。

遺言書の有無は、まず公証役場で検索をします。存在していなければ自宅や貸金庫などの重要書類が保管されていそうな場所を探します。また法改正によって、自筆証書遺言を保管する制度が導入されましたから、最終的には、管轄の法務局で検索することも必要になります。

なお、自宅等で封印された遺言書が見つかった場合、発見者は勝手に開封することはできません。家庭裁判所に検認の申し立てをして、相続人等立会いのうえ開封しないと、5万円以下の過料に処せられるとともに、遺言の有効性についてトラブルと化す危険があります。

「法定相続情報証明制度」を活用する

遺産分割協議が整うと、空き家の名義を相続人に変更する登記を行います。しかし、通常は相続する資産は空き家だけでなく、預貯金や株式などがあります。複数の銀行口座を所有している場合、これらの口座をすべて相続人に名義変更する手続きが必要になります。

こうした相続に伴う名義変更手続には、被相続人の出生から死亡までの流れが分かる戸籍謄本等と相続人全員の戸籍謄本を集めて、金融機関等に預ける必要があります。

たとえば、ひとつの銀行の名義変更を最優先に行うとすれば、手続が完了するまでの間、この「戸籍謄本の束」を預けることになります。そのため、その間は他の名義変更手続きは保留せざるを得ません。だからといって「戸籍謄本等の束」をそれぞれの手続分だけ用意することは、大変な労力を要します。

こうした事態を避けるために「法定相続情報証明制度」を活用すると、各種手続をスムーズに進めることができます。これは法務局に「戸籍謄本の束」を提出することによって、「法定相続情報一覧図」を必要部数交付してもらえるシステムです。

「法定相続情報一覧図」とは被相続人との関係性を法務局が証明するもので、「戸籍謄本の束」と同等の役割をはたします。このため「戸籍謄本の束」を提出することなく空き家の名義変更登記や銀行口座の名義変更手続を同時進行で進めることができるのです。

空き家になった実家の相続は代償分割が望ましい

相続人として他に兄弟がいる場合、空き家となった実家は、どのような方法で分割すればいいのでしょうか。複数の相続人が不動産を相続するには、次の4種類の方法があります。

  1. 現物分割
  2. 換価分割
  3. 共有
  4. 代償分割

それぞれどのような特徴があるのかみていきましょう。

現物分割

現物分割は、土地を分筆して、相続人がそれぞれの筆の所有者になる方法です。しかし、空き家が存在する場合、家屋まで分割することになるので、あまり合理的な方法とはいえません。また分筆後の敷地が狭隘(きょうあい=狭い)になると、活用のできない土地を生み出すことになります。

換価分割

換価分割は、空き家を売却して、現金を相続人で分ける方法です。それぞれ平等に分割できますが、空き家を残したいと考える相続人がいれば、この方法は選択できません。

共有

共有は、空き家の所有区分を平等に分割する方法です。この方法は、将来さらに相続人が増加して、ますます処分が困難になることが想定できるため、あまり望ましい相続方法とはいえません。

代償分割

代償分割は、空き家を一人の人間が相続をして、それに見合った金額を他の相続人に現金で支払う方法です。

この方法を選択した場合、不動産鑑定士に不動産評価を依頼して、その価値を相続人全員が共有する必要があります。そのうえで遺産分割協議書に、代償分割によって他の相続人に、現金を支払う旨の内容を明記しておきます。この遺産分割協議書を作成しないままで、現金を支払うと、受け取った相続人に贈与税が課せられることになります。

代償分割は、他の分割方法とは異なり、資産価値を損ねることがないうえに、単独で活用方法や売却の時期を決定することができます。したがって空き家を複数の人間で相続することになった場合、空き家を相続したい人にとっては、代償分割が最善の分割方法だといえるのです。

空き家の実家を相続放棄する方法もある

空き家となった実家の維持管理が負担である場合、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出することで相続から免れることができます。

ただし、相続放棄は、自分にとって都合の悪い負債や不動産を選り好んで放棄できるわけではありません。プラスの資産も同時に放棄しないといけないのです。つまり、部分的に放棄できるのではなく、負債を含む全相続財産を100%相続するか、100%放棄するかの選択を迫られます。

また、民法第940条には

相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない

と規定されています。

このため、相続放棄をした不動産は、固定資産税は免れることができますが、相続財産管理人が管理を開始するまでは、空き家の管理義務は依然として残ることになります。

すべての相続人が相続放棄を選択した空き家は、民法の規定によって最終的には国に継承されることになりますが、そこに至るまでの手続きが煩雑で時間を要するため、この間に空き家を巡るトラブルが発生すれば、相続人が責任を負うことになります。

空き家になった実家を相続した際にやるべきことは?

いよいよ実家の空き家を相続することが決まった場合、どのようなことを行なえばいいのでしょうか。項目ごとにみていきましょう。

電気・水道・ガスの使用を止める

空き家となった実家に年に限られた日数しか訪れないのであれば、電気・水道・ガスの契約を解除して、閉栓をしておきましょう。

これは料金の負担を軽減するばかりでなく、不法滞在者が快適に過ごせる環境を生み出さないための防衛策にもなり得ます。

不法侵入対策を講じる

不法侵入者の多くは、窓ガラスを破損して内鍵を解錠することによって侵入します。これを防ぐためには、空き家となった実家のすべての雨戸を閉めておくことが必須です。その他の小窓にも、侵入防止格子を取り付けておくと安心です。

不用品を処分する

不用品をいつまでも存知しておくと、腐敗したり、ダニや害虫が繁殖したりする原因となります。空き家を相続した時点で、専門の遺品整理会社に依頼して、すべて空の状態にしておいた方がいいでしょう。

敷地境界線を確定する

将来の売却を見据えている場合、敷地境界が画定していない物件はなかなか売却できません。地積測量図と照合して、それぞれのポイントに敷地境界標が打ち込まれているかの確認が必要です。

もし境界が確定していない場合は、土地家屋調査士に依頼して、境界確定を進めましょう。時間が経過すると、相手方の相続人も数が増えることがあり、ますます境界確定が困難になるため、早い段階で実施することが重要です。

空き家の実家の売却活動を進める

空き家を将来使用する可能性がないのであれば、ただちに売却活動を進めた方がいいでしょう。既定の期間内に売却が完了すると、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が適用され、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで特別控除される可能性があり、譲渡所得税の節税になります。

これは、条件に当てはまる居住用家屋を2019年12月31日までに売却すれば適用されるというものです。次の条件にすべて該当するものが対象になります。

  1. 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
  2. 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
  3. 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
  4. 譲渡価額が1億円以下であること。
  5. 相続日から起算して3年を経過する年の12月31日までに譲渡すること。
  6. 居住用家屋が耐震基準に適合するものであること。

特例の適用は期限があるため、売却を想定しているのであれば、早い時期に実践した方が、税務上のメリットがあることになります。

実家を空き家バンクに登録する

住宅は人が使用していた方が、良好な状態を維持することができます。将来空き家である実家を利用する予定があるのであれば、それまでの間、空き家として放置しておくのではなく、借家人に利用してもらう方がいいでしょう。

そのためには、実家のある自治体やNPOが運営する空き家バンクに登録して、積極的に空き家を活用してくれる人を探す方法が最も現実的です。

手続きは早めにスタートしましょう

ここまで、実家が空き家になったときにやるべきこととして、相続手続きと管理方法について説明をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。

誰も使用する人のいない家は、劣化がどんどん進行していきます。まずは、売却するのか将来使用するのかを決断して、その目的を最善に生かす方法を実践していきましょう。

特に相続人として、空き家を維持管理していこうという意思があるのであれば、必要な手続きを滞りなく進めて、空き家の管理を主体的に進めていける要件を整えることこそが、空き家を良好な状態で管理していくうえで最も重要なポイントになります。

  1. 空家等対策の推進に関する特別措置法
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