相続放棄をしたら不動産(土地・家)はどうなる?メリット・デメリットを徹底解説

不動産売却手続き
執筆者
逆瀬川勇造

明治学院大学卒。地方銀行勤務後、転職した住宅会社では営業部長としてお客様の住宅新築や土地仕入れ、広告運用など幅広く従事しました。2018年よりP.D.Pを設立。WEBを通して不動産に関する問題解決を目指します。
保有資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)、住宅ローンアドバイザー、相続管理士

ご両親が亡くなるなどして相続が発生したものの、「借金の額がどのくらいあるか分からない」といった理由で相続放棄を考えることがあるでしょう。

ところで、相続放棄された財産の中に土地建物が含まれていた場合、名義人や所有者はどうなるのでしょうか。

本記事では、不動産の相続放棄について、手続き方法、相続放棄した後の不動産の取扱い、不動産を相続放棄するメリット・デメリットなどをお伝えしていきます。

相続放棄の概要

親が亡くなったなどして遺産を相続することが決まった際、親に借金があるなどの理由から財産を相続放棄することがあります。

通常、人が亡くなると、亡くなった方の財産は子どもや親、兄弟などに相続という形で引き継がれますが、財産を相続する側にも受け取るかどうかを判断する権利があります。

財産を相続する側の人(相続人)が、財産を相続する権利を放棄することを相続放棄と言います。

もし相続人全員が相続放棄すると、放棄された財産はどうなるかというと、まず家庭裁判所により相続財産管理人が選定されます1

相続財産管理人は、相続財産の内、プラスの財産については債権者に対して弁済するなどの手続きを取り、なおプラスの財産がある時はその財産は国庫に帰属することになります2

一方、最終的に財産がマイナスであれば、破産するなどして支払い義務の免除を受けます。

相続放棄とは

ここでは、改めて相続放棄について詳しく見ていきましょう。

財産を相続する権利のある人(法定相続人)

相続放棄は、人が亡くなったときに、その人から財産を相続する権利のある人(法定相続人)が、財産を相続したくない時に取る手続きです。

法定相続人は以下のように順位が決められています。

常に配偶者
第一順位
第二順位
第三順位兄弟

例えば、子どものいる家庭であればまずは配偶者(夫・妻)と子が相続人となります。

一方、子のいない家庭は配偶者と親が、子も親もいない家庭は配偶者と兄弟が相続人となります。

また、子や兄弟姉妹に子どもがいる場合で、子や兄弟姉妹が亡くなっている場合にはその子どもが相続の権利を持ちます(代襲相続)。

ちなみに、子どもがいる家庭でも子全員が相続放棄すると次は親に権利が移り、親も相続放棄すると兄弟姉妹に権利が移ることになります。

相続放棄の効果

相続人となった方が相続放棄すると「初めから相続人とならなかったもの」とみなされます3

相続財産がどれだけ多かろうと、プラスの財産がマイナスの財産より多かろうと、その逆であろうと、相続放棄した人は相続財産とは無関係になります。

相続放棄すると、その相続人は初めから相続人とならなかったものとされるため、相続人に子どもがいたとしても代襲相続は発生しません。

また、先述の通り同順位の相続人全員が相続放棄すると、次の順位の人が相続人となります。

相続放棄には期限があるため、同順位の人全員が相続放棄することが決まった際には、次の順位となる人に知らせるようにしましょう。

相続放棄の期限

相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」に手続きする必要があります。

「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは具体的には「被相続人が亡くなったこと」を知っており「被相続人との関係性(自分の父親であるなど)」を知っていることが条件とされます。

また、同順位の相続人全員が相続放棄して、次の順位の人が相続人になった場合、「先順位の相続人全員が相続放棄した事実を知らされた時」が起算日となります。

なお、この3カ月は相続財産の状況を調査するための期間として想定されており(この期間のことを熟慮期間と言います)、3カ月経っても相続財産の調査が終わらないような場合には家庭裁判所に申し立てすることで延長できます。

ただし、相続期限の延長については熟慮期間内に手続きしなければなりません。

相続放棄の手続き

相続放棄は、相続の開始を知ってから3カ月以内に必要書類を家庭裁判所に提出しなければなりません。

相続放棄手続きに必要な書類としては以下のようなものがあります。

  • 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本
  • 被相続人(亡くなった方)の住民票又は戸籍の附票
  • 相続放棄する人の戸籍謄本
  • 相続放棄申述書
  • 800円分の収入印紙

なお、上記書類を提出する場所は、「被相続人の最期の住所地を管轄する簡易裁判所」となります。

提出方法は直接出向くか、郵送で送付するかのいずれかを選べます。

相続放棄は上記書類を用意すれば自分で手続きできますが、書類を集めるのが大変なこともあります。

手間がかかって大変だと感じるのであれば、費用はかかりますが、司法書士に手続きを依頼すれば手続きを代行してもらえます。

相続放棄したら不動産はどうなる?

冒頭で示したように、相続放棄した不動産は債権者に支払われるか国庫に帰属することになりますが、ここでは改めてその流れや詳細を解説します。

次の法定相続人に権利が移動する

相続放棄は各相続人が単独で申請するもので、同順位の相続人が複数いる場合に相続人の1人が相続放棄すると、まずは他の相続人の相続分が増えることになります。

配偶者の法定相続分は1/2、子の法定相続分は残り1/2の相続分を子の人数で分けます。

例えば、配偶者と子2人がいる家庭の場合、配偶者は1/2、子2人はそれぞれ1/4ずつの法定相続分を持ちます。

ここで、子の1人が相続放棄した場合、その相続人は初めからいなかったこととされるため、配偶者が1/2、もう一方の子が1/2の法定相続分を持つことになります。

次に、同順位の法定相続人全員が相続放棄すると次の順位の相続人に権利が移ります。

例えば、先ほどの例で子2人が相続放棄すると、親が相続人となります。

また、親がすでに亡くなっている場合や、親も相続放棄した場合には兄弟姉妹が相続人となります。

さらに、兄弟姉妹も相続放棄した場合には相続財産が法人化され、その法人を管理する相続財産管理人が家庭裁判所により選定されます。

相続財産法人と相続財産管理人

もともと相続人が1人もいない場合や、相続人が全員相続放棄した場合には、相続財産は相続財産法人となり、それを管理する相続財産管理人が選定されます。

なお、相続財産管理人は利害関係人や検察官の申立によって家庭裁判所が選任しますが、この申立をしないうちは、相続人が相続財産の管理について責任を負うことになるので注意が必要です。

相続債権者も特別縁故者もいなければ国庫に帰属する

相続財産管理人が選定されると、官報に公告され、特別縁故者(相続財産の債権者や受遺者)への通知連絡がなされます。

その後、特別縁故者から届出がある場合には相続財産から支払いがなされます。

これら、特別縁故者への支払いが全て終わった場合、もしくはそもそも届出がない場合には残った財産が国庫に帰属されます。

ここまでの手続きが終わると、相続財産法人は解散し、相続財産管理人の仕事は終わります。

なお、相続財産がマイナスなら相続財産法人が破産手続きを取るか、破産せず放置されるかのいずれかです。

不動産を相続放棄するメリット

不動産の相続放棄にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

メリット1:不動産以外の負の財産を放棄できる

人が亡くなってその相続財産の相続人になることが決まった場合、相続財産をどうするかについては以下の3つの内いずれかの手続きを選ぶ必要があります。

  • 単純承認
  • 限定承認
  • 相続放棄

単純承認とは、相続財産についてプラスの財産もマイナスの財産も全て相続すること。

限定承認はプラスの財産を限度として相続する方法です(つまり、プラスの財産よりマイナスの財産が多い時はマイナスが超過する部分について責任を負う必要がありません)。

一方、相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も関係なく財産をできる権利を放棄することです。

これら3つの手続きは、基本的に以下のように選択されます。

  • 単純承認:プラスの財産が多いことが分かっている時
  • 限定承認:プラスかマイナスか分からない時
  • 相続放棄:マイナスの財産が多いことが分かっている時

不動産は資産性のあるプラスの財産ですが、それに付随するローンや、他の借金などがプラスの財産より大きい場合には、相続放棄することでマイナスの財産を相続しないでよくなります。

メリット2:活用できない不動産を放棄できる

2つ目のメリットは活用できない不動産の所有権を放棄できるということです。

親から相続した田舎の不動産など、相続しても活用できず、売却しようにも買い手がつかないような土地もあるでしょう。

このような不動産であっても、所有権を持つと毎年固定資産税を支払う必要があります。

実は、こうした土地は誰かに譲渡したいと思っても譲渡先がありません。

国や自治体は例え活用されていない土地でも、国や自治体にとって利用価値のある土地でなければ寄付さえ受け付けてくれないのが原則です。

一方、相続放棄してしまえば、合法的に所有権を放棄できるのです。

メリット3:固定資産税を払わなくてよくなる

前述の通り、不動産は保有しているだけで固定資産税を納税する必要があります。

なお、土地の上に家が建っている場合には、固定資産税を最大で1/6にできる軽減制度がありますが、空き家対策特別措置法が制定されたことにより、きちんと管理されておらず、「特定空き家」に指定された土地は上記軽減税率の適用を受けることができなくなりました。

軽減税率の適用を受けられなくなると、固定資産税が最大で6倍になってしまいます。

こうした問題も相続放棄してしまえば心配する必要がなくなります。

不動産を相続放棄するデメリット

次に、不動産を相続放棄するデメリットを見てみましょう。

デメリット1:売却したり活用したりできなくなる

不動産を相続すれば、不動産を売却して換金したり、土地の上にアパート・マンションを立てて活用したりといったことが可能となります。

しかし、相続放棄してしまえばいずれもできなくなります。

デメリット2:司法書士に依頼するとお金がかかる

相続放棄は相続の開始を知った時から3カ月以内に必要書類を家庭裁判所に提出する必要があります。

自分で手続きするのであれば、手続きの際に支払う印紙代800円や、戸籍謄本など必要な書類の請求費用があるとはいえ、高くとも数千円の費用負担で済みます。

一方、司法書士に相続放棄の手続きを依頼すると、上記費用に加えて司法書士に支払う司法書士報酬がかかります。

デメリット3:(被相続人の)債権者に迷惑がかかる

最期に、相続放棄は主に相続財産のうちマイナスの財産が多い時に選ばれますが、マイナスの財産があるということは、被相続人(亡くなった方)にお金を貸した人がいるということでもあります。

相続放棄するということは、それら債権者への支払いを放棄するということでもあります。

もちろん、例え家族であっても自分の借金ではないのですから全く気にする必要のないことですが、後々のトラブルを防ぐためにも、債権者に迷惑がかかるということは意識しておくとよいかもしれません。

不動産の相続放棄が出来ないケースとは?

相続財産がマイナスの財産が多いのにも関わらず相続財産しないでいると、自分とは関係のない多額の借金を相続しないといけなくなる可能性もあるため、適切に相続放棄手続きすることが重要です。

一方、以下のようなケースでは相続放棄できなくなってしまいます。

相続放棄の期限を過ぎた場合

まず、相続放棄の期限は「相続の開始を知ってから3カ月以内」とされています。

この期間を過ぎた後は相続放棄の手続きはできず、相続放棄も限定承認もしていない場合には単純承認したものとみなされます。

相続放棄の期限は家庭裁判所に申し立てることで延長してもらえることもありますが、その手続きができるのは期限内であるときだけです。

なお、3カ月が過ぎた後は原則として相続放棄できませんが、依頼する司法書士によっては期限後でも延長が可能になることがあります。

確実に受理されるわけではありませんし、期限内に登記依頼するより費用が高くなりますが、どうしても期限後に相続放棄したいのであれば、過去に期限後の相続放棄を成功させたことのある司法書士に相談してみるとよいでしょう。

遺品の一部に手をつけた場合

また、相続財産の一部に手をつけてしまった場合には相続放棄できなくなります。

具体的には、被相続人(亡くなった方)の借金について、相続放棄する前に督促があり、被相続人の預金をおろして借金の返済に充ててしまった場合が該当します。

相続財産に一部でも手をつけると、単純承認したとみなされて相続放棄できなくなるからです。

こうしたことを防ぐため、いくら被相続人にお金を貸した人からの申し出であろうと、相続放棄前には絶対に相続財産に手をつけないようにしましょう

なお、どうしても返済が必要なのであれば、自分の持っているお金から返済すると単純承認したとは見なされません。

まとめ

不動産を相続放棄した後の不動産の行方や相続放棄の効果、不動産を相続放棄するメリット・デメリット、相続放棄できなくなる条件などお伝えしました。

相続放棄は、基本的に相続財産のうち借金が多いときに選ばれるもので、適切に手続きしないといつの間にか被相続人(亡くなった方)の借金を背負わされていたということになりかねません。

自分で手続きして失敗してしまっては元も子もないため、費用はかかりますが司法書士に依頼して手続きしてもらうことをおすすめします。

  1. 民法第936条1項:相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続管財人を選任しなければならない。
  2. 民法第936条2項:前項の相続管財人は、相続人のために、これに代わって、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の行為をする。
  3. 民法第939条:相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
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